ビジネスモデル特許及びソフトウェア特許の
審査基準改訂のお知らせ

2001.4.13 河野英仁


1.主な変更点(概要)

<1>ビジネスモデル特許について

1)単なるビジネス方法は特許されないことが明確にされました。つまり、ビジネス方法をコンピュータ、情報技術(IT)を用いて、どのように実現するかを明確にしないと、特許が認められません。

2)また、従来、紙、FAX、電話等で行っていた処理を単にコンピュータ化した(例えばインターネットを用いる)というだけでは、進歩性がないとして、特許されないことが明確にされました。

<2>ソフトウェア特許について

 プログラムが物の発明として認められることになりました。従来はプログラムが記録された記録媒体(CD−ROM等)という形でしか保護されていませんでした。現在ソフトウェアの流通はインターネットを通じてダウンロードされることが多いことから、プログラム自体を物として取り扱うようにしたものです。


2.変更点の詳しい説明〜ビジネスモデル特許編

1)ビジネス方法を、コンピュータ、ITを用いて具体的に実現させることが必要です。

 審査基準には「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること」が必要と記載されています。
 つまりピュアなビジネス方法は特許の対象とはならず、これをコンピュータ、ITを用いてどう実現するか、そのHow Toを記載する必要があります。

*具体的にはどうすればいいのでしょうか?

例えば、「平日半額サービス」というビジネスを展開すると想定します。

 この場合、このビジネス方法を申請するのではなく、これを具体的に実現するコンピュータ等を記載して出願する必要があります。

 具体的には、
a)各商品の価格を記憶しておく機能、
b)曜日を判別できる時計機能、
c)平日にだけ、記憶した価格を除算する機能を備えるレジ端末で権利を取得することになります。
 その他、「回転寿し」のビジネスであれば、寿しを運ぶベルトコンベア装置で権利を押さえることになります。

 このように、ビジネス方法は形を変えて権利化を狙うことができます。インターネット等のITを使ったビジネス方法も同じことです。私が考えたビジネスモデル特許はこちら


2)すでに行われているビジネス方法を単に自動化したというだけでは特許されません。

例えば従来、電話やFAXで商品の販売を行っていたとします。これを単にインターネットを用いて実現したというだけでは進歩性がないとして、特許されません。
 そのような場合、ネットワーク化したことに伴う、何らかのアイデアを追加して申請する必要があります。


3.変更点の説明〜ソフトウェア特許編

1)コンピュータプログラムが物の発明として認められることになりました。
 つまり「コンピュータプログラム」を特許請求の範囲に記載することが可能となり、コンピュータプログラムを、CD−ROM等で販売することはもちろん、ネットワーク経由でダウンロードする行為も、特許発明の実施行為として認められるようになりました。

2)今回の審査基準改訂で変化する点は?

 コンピュータプログラムクレームを記載することができます。
 これにより、インターネット経由で、第3者が無断で特許に係るコンピュータプログラムを配信する行為等も、特許権の侵害と主張することができます。


3)改訂した理由は?

 基本的にソフトウェアはCD−ROM等の記録媒体で販売される流通形態をとっています。
 従来ソフトウェアは「コンピュータプログラムを記録した記録媒体(CD−ROM等)」という形で保護されていました。
 従って従来は、第3者がそのソフトウェアが記録されたCD−ROMを、業として、製造、使用、販売等する行為が侵害となっていました。つまりパッケージのCD−ROMを販売した場合等にのみ侵害となったわけです。
 ところが、近年、インターネット経由で、ソフトウェアが配信されるケースが増加しています。そうすると、ソフトウェアを、インターネットを通じて配信する行為は、上記のいずれにも当てはまらず、ソフトウェアを適切に保護できという問題が発生しました。
 そこで、コンピュータプログラムを物の発明とし、コンピュータプログラムクレームの記載を認めることで、コンピュータプログラムを無断で第3者が業として、配信等する行為をも特許権の侵害となるように手当したのです。

4)今後の対策は?

 今回の、審査基準の改訂により、そのソフトウェア発明が、CD−ROM等の記録媒体で販売される可能性がある場合や、インターネット経由で配信される可能性がある場合は、従来の装置クレームの他、プログラムクレームを作成する必要があります。
 例えば、ブラウザのプラグインソフト等です。

5)審査基準改訂に伴う留意点は?

 裁判所の判断が下されるまで、できるだけ複数のカテゴリのクレームを作成する必要があります。
 特許庁がコンピュータプログラムを物の発明として取り扱うと審査基準で述べていますが、実際の侵害訴訟において裁判所がそのように判断するとは限らないからです。つまり、無対物たるコンピュータプログラムを、そもそも「物の発明」とするには無理があるように思われます。
 従って、判例が確立するまでは、コンピュータプログラムクレームの他に、従来の記録媒体クレームを記載しておくことが望ましいといえます。
 具体的にはコンピュータプログラムクレームについては下位階層までクレームし、記録媒体のクレームについては念のため上位階層のクレームを記載しておくことが望ましいでしょう。

審査基準は特許庁のHPに掲載されています。
(323kbのpdfファイルです。ダウンロードにしばらく時間がかかります。)


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