各誌で話題の登録商標“阪神優勝”

岡田充浩  2003.8.1 


 本商標は「被服,履物,おもちゃ等」を指定商品として、2001年3月に出願され、翌年2月に登録され商標権が発生しています。
 各紙はこの登録商標の存在により“阪神球団”が自社商品に“阪神優勝”の文字を使用できず困惑していると報道していますが、例えば“阪神タイガース優勝!!”又は“タイガース優勝”という文字の使用はできます。
 もっと深刻な問題があります。それは東京の某会社が“阪神優勝2003”のロゴをTシャツに付して販売する為、本商標の権利者と1年間の使用許諾契約を結んでいるという状況です。つまり“阪神球団”は球団創立1936年より蓄積してきた業務上の信用に只乗りされ、ライセンス料が自社に入ってこず、例えば商品が粗悪品であったり法外に高額であったりした場合、その批判は本商標の権利者や某会社ではなく“阪神球団”に返ってくる危険性を負うことになるのです。
 今回は、本商標権の権利者が“阪神球団”側に商標権を譲渡するという形で問題解決のようですが、通常は多額の利益が絡むだけに紛争が泥沼化する場合もあります。

 ところで本商標権の権利者とは別人が、“巨人優勝”の文字を商標登録出願しています。こちらは“読売巨人軍ジャイアンツ”と混同するので登録を拒絶すると判断されています。“阪神優勝”の場合は“阪神”の部分が地域名を示すので登録されたと言えます。その意味では“広島優勝”の文字も同様です。

 その他大リーガー“イチロー”については、彼の所属していた“オリックス野球クラブ株式会社”が既に多種商品やサービスについての商標権を取得しています。同じ大リーガーの“松井”については、“松井/HIDEKI/55”の絵文字からなる商標が個人により出願されています。“ベッカム”の文字からなる出願もありましたが、こちらは著名人の名前ですので登録を拒絶する判断がされています。
 いずれにしても今回の騒動により著名な氏名等をもじった商標を出願してくるケースが増えるでしょう。                       
以 上

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