改正実用新案制度をどのように活用できるの?

野口 富弘 2005.7.1
(KRP PRESS 7/1号に掲載)


2005年4月1日に施行された改正実用新案法により、実用新案制度が、従来よりも魅力のある制度に生まれ変わりました。これにより、特許制度とともに改正実用新案制度をより有効に活用していくことができます。今回は、改正実用新案制度の主な内容を確認し、その活用のポイントを考えてみましょう。

☆実用新案制度の主な改正点
 @実用新案権に基づく特許出願制度の導入
  実用新案権として設定登録された後でも、実用新案登録出願から3年以内であれば、実用新案登録に基づいて特許出願をすることが可能となります。
  従来の制度でも、実用新案登録出願が特許庁に係属中であれば特許出願への変更は可能でしたが、出願してから実用新案権の設定登録を受けるまでの係属期間が平均で約5月と短いため、出願変更の機会は非常に制限されていました。このため、設定登録後に審査を経た安定した権利を取得する可能性があり得る場合、実用新案制度は利用しにくいものでした。

 A実用新案権の存続期間の延長
  実用新案権の存続期間が、これまでの「出願から6年」から「出願から10年」に延長されます。
  ライフサイクルの短い技術を保護する観点から、従来、実用新案権の存続期間は、出願の日から6年とされていましたが、全事業分野平均(1998年実態調査)の製品のライフサイクルは約8年となっていること、出願日から6年という短い存続期間では、訴訟係属中に権利が消滅してしまうこと、諸外国の実用新案制度の存続期間が、出願から10年となっていることなどを踏まえ、存続期間が延長されました。

 B実用新案権の登録料の引下げ
  実用新案権の登録料が下記のとおり変更され、1〜6年までの登録料が引き下げられます。
  出願時に納付する第1年から第3年までの登録料の負担軽減のためです。

改正前

改正後

基本部分

請求項毎

基本部分

請求項毎

1〜3年目の各年

7,600円

700円

2,100円

100円

4〜6年目の各年

15,100円

1,400円

6,100円

300円

7〜10年目の各年

18,100円

900円

 C訂正の許容範囲の拡大
  これまで請求項の削除のみが認められていた訂正の範囲が、実用新案登録請求の範囲の限縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正を1回に限り行えるようになります。
  従来、第三者からの攻撃(無効審判請求や情報提供など)に対して、無効理由に該当する瑕疵を除去するためには、請求項の削除しか認められておらず、特許制度に比べて実質的な訂正が認められていないことは実用新案権者に酷でした。一方、無審査で登録される実用新案制度で、無制限に訂正を認めることは、不当に広い権利範囲を有する実用新案権が増大し、権利の有効・無効の調査負担を第三者に強いることになります。そこで、一定の制限のもと、実用新案権の訂正の範囲が拡大されました。

☆改正実用新案制度の活用のポイント
 技術開発の成果物、開発した製品などについて権利化を図る際に、特許出願をすべきか、実用新案登録出願をすべきか、悩む場合があります。
 開発した製品(技術)の模倣が比較的容易であり、製品のライフサイクルが短いなどの理由により、出願時には、低コストで早期に権利化をしたいが、一方で、技術動向の変化、事業計画の変化などにより、長期にわたって安定性の高い権利を取得する必要性が、将来発生し得ることを否定できないような場合には、今回の改正実用新案制度を活用することができます。
 まず、実用新案登録出願をして実用新案権を取得しておき、出願から3年の間に事業戦略の中で重要性が増した場合に、実用新案登録を特許出願へ変更して、長期間安定した権利を取得し直すわけです。
 なお、改正実用新案制度で保護される対象は、従来どおり、物品の形状等に限定されており、方法、コンピュータプログラムなどは保護されません。

以 上

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