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包括的ライセンス契約の登録

〜契約があれば安全?〜

2008.11.1 新井 景親

1.はじめに
 特許発明を実施する場合には、特許権者との間で予めライセンス契約を締結し、通常実施権の許諾を受けることが必要です。ただ通常実施権は当事者間のみで有効であり、破産又は会社再編等により、特許権が第三者に移転した場合には、該第三者から差止又は損害賠償を請求されるおそれがあります。
 このような事態を防ぐために、通常実施権を登録する制度が設けられています。この登録制度は、特許番号を特定して通常実施権の登録を行うものであり、特許権を取得した第三者は、登録された通常実施権者に対して権利行使できません。

2.既存の登録制度の問題
 ところで電機電子産業のように、膨大な量の特許権についてライセンス契約を締結する必要がある産業においては、特許番号を特定しない包括的ライセンス契約を行うことがあります。
 前述した登録制度は、特許番号の特定が必要であり、包括的ライセンス契約では通常実施権を登録することはできません。このため包括的ライセンス契約を締結した場合には、特許権を取得した第三者から権利行使されるおそれがあります。
  そこで特許庁は、包括的ライセンス契約に基づく通常実施権(以下特定通常実施権といいます)の登録を平成20年10月1日より開始しました。

3.特定通常実施権の範囲の特定方法について
 特定通常実施権の範囲を特定するためには、
@)権利の種類(特許権、実用新案権、又はこれらの専用実施権)A)許諾対象権利の取得時期B)実施製品・技術を明示することが必要です。
 例えば「平成21年○月×日から平成26年△月□日までの間に取得した携帯電話の特許権」のように記載します。

4.開示範囲について
 既存の登録制度では、通常実施権の登録事項は全て一般に開示されますが、特定通常実施権登録制度では、特許権者等の利害関係人が申請しない限り、特定通常実施権者の氏名、特定通常実施権の範囲等は開示されません

5.法的効果について
 特定通常実施権者は、特許権等が移転した場合に、新たな特許権者等に対抗することができます。前述の例で言えば、特許権を取得した第三者の権利行使は認められません。

■特定通常実施権の登録についてご質問がある方はお気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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