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共同開発事業における技術保護は万全ですか?

~秘密保持契約の重要性~

2013.4.1 野口 富弘

 共同開発事業を実施する際に当事者双方の秘密情報を保護するために秘密保持契約(守秘義務契約)を締結することが一般的です。しかし、秘密保持契約に関する紛争が生じる可能性が徐々に高まってきています。そこで、一つの裁判例(本事案)を通じて秘密保持契約の留意点を紹介します。

1.事案の概要
 被告Xと原告Yは、被告Xの開発したLEDフラットパネル製品に関して秘密保持契約を締結しました。被告Xは「光源装置」に係る特許発明の特許権者です。原告Yは、被告Xが原告Yに販売した「SE型リフレクターフラッター」(以下、「被告製品」といいます)を証拠(公知の発明)として、特許庁に対し、無効審判を請求しました。特許庁は、「被告製品」についても秘密を保持すべき関係にあったとし公知性を認めない審決をしました。本件は審決を不服として原告Yが審決の取消を求めた事案です(知財高裁 平成23年(行ケ)第10271号)。 。

2.原告Y主張の審決取消事由
 原告Yは、①「被告製品」の販売は、研究開発の段階が終了した通常の商取引であること、②「被告製品」は、秘密保持契約の対象であるLEDフラットパネル製品に用いられた「フラッター技術」と異なり、「リフレクタ技術」を用いたものであることなどを理由に、「被告製品」について秘密保持すべき関係にはないと主張しました。

3.知財高裁の判断
 知財高裁は、「被告製品」の被告Xと原告Yとの共同開発は、秘密保持契約の対象となる事業に含まれ、原告Yは被告Xに対し、「被告製品」に関するすべての交渉において提供または開示される技術情報について秘密保持契約に基づく秘密保持義務を負うことが明らかであるとして、原告Yの請求を棄却しました。

4.秘密保持契約の留意点
 共同開発の結果として技術が異なる装置が開発されることは一般的であり、秘密保持契約の対象である技術又は製品に、協議又は交渉を重ねて将来開発される応用技術も包含されるようにすることが重要です。
 例えば、開示者にとっては、秘密保持契約の適用範囲として、「本契約に定める規定は、共同開発事業に関するすべての協議又は交渉において提供又は開示される情報及び資料に適用される。」旨を明示しておくことが大切です。
 また、秘密情報の定義として、「本契約において秘密情報とは、情報を開示する者が被開示者に対し、開示又は提供する営業情報、ノウハウ、技術情報および経営情報等一切の情報ならびに資料をいう。」旨を明示しておくことも大切です。
 一方、被開示者にとっては、開示者が被開示者に開示した時点で被開示者が既に保有していた情報、あるいは既に公知又は公用であった情報は除外する旨を明文化することが大切です。

◆ 発明に関するご相談は、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせください。

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