周知・著名商標の保護

−改正審査基準−
はじめに
 商標の内でも特に大きな業務上の信用が化体された有名商標(俗に“のれん”ともいわれる)は、商標法上「周知商標」または「著名商標」と呼ばれて、従来から通常の商標以上に強い保護が与えられてきました。
 今回、こうした「周知商標」及び「著名商標」の保護をさらに強化するため審査基準の改正がありました。改正は、審査上の取扱を明確且つ分かり易くし、統一的な運用を図るためといわれております。更に、外国の国家名を含む商標の取り扱いについても、審査基準の改正がありました。以下は改正された審査基準の要旨です。
 1. 周知・著名商標の保護
 (1) 周知・著名商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、原則として、4条1項 10号、11号、15号を理由に拒絶されます。
  i) 具体的には、周知・著名商標と結合された結果、外観構成とがまとまりよく一体に表されているもの、又は、観念上の繋がりがあるものは、原則として、該周知・著名商標と類似するとして、当該周知・著名商標が未登録の場合は10号、登録済の場合は11号により拒絶されます (【注】参照のこと)。
  例えば、化粧品についての商標「ラブロレアル」や鞄類についての商標「PAOLOGUCCI」は、それぞれ周知・著名商標「ロレアル」や「GUCCI」と類似すると扱われますので登録は取れません。
  但し、該周知・著名商標の部分が既成の語の一部となっている等の場合は除かれます。
  例えば、金属加工機械器具についての商標「TOSHIHIKO」や時計についての商標「アルバイト」は、それぞれ周知・著名商標「IHI」や「ALBA」と類似とは扱われません。
  ii) しかし、同上の場合でも出所の混同を生ずるおそれがある場合は15号で拒絶されることもあります。
  例えば、被服についての商標「arenoma」と鞄・バッグ等で著名な「renoma」とは、出所の混同を生ずるおそれあるものとして扱われます。
  一方、カメラについての商標「POLAROID」と化粧品についての著名商標「POLA」とは、出所の混同を生ずるおそれがないものとして扱われます。
 【注】11号は周知・著名商標でなくとも既登録であれば後願が排除できる規定ですから周知・著名商標が登録済であれば、10号ではなく11号で拒絶できるということです。この場合、既登録商標が周知・著名であるので後願に対する類否判断が厳しくなるもとの思われます。
 (2) 特許庁がインターネットで提供している「特許電子図書館」内で「日本国周知著名商標」として掲載されているものは、原則として、周知・著名商標として扱われます(10号、11号、15号、19号)。
 (3) 下記の資料は、審査に用いる周知・著名商標関連資料として活用できるよう公表されます。(10号、11号、15号、19号)
  外国政府又は外国政府に準ずる公益団体から特許庁に提出された「外国周知商標」、及びAIPPI・JAPANが作成した「日本有名商標集」。
  2.  外国の国家名を含む商標は、外観構成がまとまりよく一体に表されている場合や観念上の繋がりある場合も含め、原則として、商品の産地・販売地又は役務の内容の特質若しくは役務の提供場所を表すものとして扱われます。
  i) このように扱われる結果、該商標が該産地・販売地以外の国又は地で生産・販売される商品等について使用されるときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものとして、16号で拒絶されます。
  例えば、指定商品「第14類 時計」について商標「SWISSTEX」は、「SWISS」の部分がスイス国を推認させます。
  ii) 但し、外国の国家名の部分が、既成語の一部となっている場合、その他国家名を推認すことが困難な場合は除かれます。
  例えば、指定商品「第11類 浴槽」についての商標「どどいつ」は、都々逸を認識させ、ドイツ国を認識させるものではありません。
  また、商標中に外国の国家名が入っていても、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせることがない場合も除外されます。
  例えば、商標中にイギリスの文字があっても、指定商品が「イギリス製の被服」となっていたり、商標中にフランスの文字があっても、指定役務が「フランス料理の提供」と明示してある場合。
あとがき
改正審査基準は平成11年7月1日から既に実施されており、審査は、過去の審決例、登録の状況に拘らず改正審査基準に基づいて行われています。
以 上
Copyright 1999 KOHNO PATENT OFFICE