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AIは発明者になれるか?

~欧州特許庁、AIを発明者とする特許出願を却下~

2020.4.1 弁理士 難波 裕

 本誌2019.11月号でも掲載しましたが、AIを発明者とする特許出願が米国、欧州、英国に出願されたことで話題になっております。先日、欧州特許庁(EPO)が特許出願を却下する決定を下しましたので、続報をお伝えします。

1. 経緯
 問題となっている特許出願は2018年に米国、欧州、及び英国に出願されました。この特許出願に係る発明は、「DABUS」と名付けられたAIが生み出した発明で、人間が介在せず、AIがデザイン(生成)した構造物に関する発明です。
 その特許出願において、AIである「DABUS」が発明者に指定されたことで問題が起きました。発明は当然人間が創作するものであるという考えから、各国では自然人のみを発明者と認めています。一方で、本件の出願人であり、「DABUS」の開発者でもあるStephen Thaler氏は、自分にはAIの所有者としてAIが創作した知的財産権を承継し、特許を取得する権利があると主張しています。
 米国、欧州、英国の各特許庁は判断を求められましたが、まずEPOが判断を示し、特許出願を却下する決定を下しました。

2. 出願却下の判断理由
 EPOは今回の決定についてコメント*を発表し、以下の理由で出願を却下したと説明しています。
① 欧州特許条約の法的枠組みの解釈に照らして、発明者は自然人でなければならないと考えられる。この考えは国際標準であり、多くの国の裁判所がこれを認めている。
② 発明者の指定は一連の法的結果をもたらすため必須であり、特に、発明者が正当な人物であり、かつ、発明者の地位に関連する権利から利益を享受できることが要求される。上記の権利を行使するためには、発明者はAIにない法的人格を持たなければならない。
③ なお、AIに名前を付けただけでは上記の要求を満たすことにならない。

* https://www.epo.org/news-issues/news/2020/20200128.html

3. 今後の動向
 EPOは出願却下の決定を下しましたが、出願人は今回の決定に対して不服申立をする機会が与えられており、今後も争う可能性が残っています。また、米国、英国では引き続き出願が係属中であり、特に米国特許商標庁(USPTO)は本件についてパブリックコメントを募集しています。今後の動向に注視していく必要があります。

◆AI関連出願について質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所まで御連絡ください。

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