CAFC Update23

2005.8.22 

CHECKPOINT SYSTEMS, INC.,  
Plaintiff-Appellant
vs.
ALL-TAG SECURITY S.A.
and ALL-TAG SECURITY AMERICAS, INC.
and SENSORMATIC ELECTRONICS CORPORATION,
Defendant-Appellees
譲渡人禁反言(Assignor Estoppel)の法理

1.概要

 Checkpoint社(以下、原告)はセキュリティタグに関するU.S.Patent No. 4,876,555(以下、555特許)の特許権者である。原告は555特許の侵害であるとして、ALL-TAG社(被告A社)及びSensormatic社(被告S社)を、東地区ペンシルバニア連邦地方裁判所に訴えた。555特許の元となる特許出願No. 168,468(以下、468出願)には単独の発明者が記載されていたところ、被告は他の共同発明者が存在することを示す宣言書を提出した。これを根拠に地裁は、555特許は米国特許法第102条(f)のもと無効であるとの略式判決を被告に認めた*1。原告はこれを不服としてCAFCに控訴した。CAFCは譲渡人禁反言(Assignor Estoppel)の法理を考慮すべきであったこと及び発明者に関する事実に争いがあることから、地裁がなした略式判決を差し戻した。

2.背景

 原告は盗難防止用のアラームタグを製造販売している。このタグは小売店で商品に取り付けられ、タグが付いた商品を店外へ持ち出すとアラームが作動する。被告A社も同様の技術を用いたタグを製造販売している。被告S社は被告Aから製品を購入している。
 訴外PichlはスイスのDurgo社のオーナーであり、同社は当該タグの研究開発を行っていた。また、Jorgensonは自営の技術コンサルタントであり、Durgo社及び被告A社にコンサルティングを行っていた。1987年Durgo社はスイス特許庁に当該タグに関する出願を行った。続いてスイス出願の優先権に基づく468出願が米国になされた。468出願の発明者は単独でJorgensonであり、Durgo社に譲渡された。468出願の審査過程において、Jorgensonはスモールエンティティに関する宣言書*2を提出し、この宣言書の中で、Jorgensonは彼が単独発明者であることを述べている。
 その後468出願は1989年10月に555特許として成立し、原告はDurgo社を買収し、同時に555特許を取得した。一方、PichlはDurgo社を去り、被告A社を1989年に設立し、その後1997年に同社を去った。
 2001年5月原告は被告A社及び被告S社を地裁に訴えた。被告は、555特許は102(f)のもと無効であるとの略式判決を求めた。被告は、Jorgenson及びPichilは共同発明者であるのにもかかわらず、Jorgensonを単独発明者としたことから、米国特許法第102条(f)*3のもと特許は無効であると主張した。2002年、略式判決の求めに際し、被告は地裁に宣言書を提出した。これには、(i)Jorgensonは555特許の単独発明者ではない、 (ii)Jorgenson及びPichlは共同発明者である、及び(iii)Pichlの名前は468出願から意図的に削除されたことが記載されていた。
 一方原告は被告A社には譲渡人禁反言(Assignor Estoppel)が適用され、102条(f)に基づく抗弁はできないと反論した。
 譲渡人禁反言は、他人に特許を譲渡した者は、後にその特許の有効性を争うことができないとするものである。また譲渡人に内々に関与する当事者もまたその有効性を争うことはできない*4。内々の関与とは、関係者間で緊密な関係がある場合であるとされる。例えば、侵害者が発明者の知識及び協力を侵害のため利用した場合である。この法理は、何かを第3者へ販売しその後、それが無効であるとの主張を認めることの不公平及び不公正を防止するものである*5
 地裁は、2002年に提出された宣言書は、555特許がPichl及びJorgensonによって共同で発明されたことを明らかに示すものであり、555特許は102条(f)のもと無効であるとの略式判決を行った。また、原告が主張した譲渡人禁反言も退けた。その理由として被告A社には譲渡人禁反言が生じるかもしれないが、555特許の譲受に無関係な被告S社には譲渡人禁反言が生じず、複数の被告のうちの一被告S社に対して無効理由が存在する場合は、全体として特許は無効になると判断した。つまり地裁は、被告S社には譲渡人禁反言が生じず、102条(f)のもと特許は無効であるから、被告A社に対する譲渡人禁反言を考慮することなく特許無効との略式判決を認めた。原告はこれを不服として控訴した。

3.CAFCの争点

(1)事実関係に争いがないといえるか
 審査経過で提出された宣言書は発明者が単独と主張され、地裁で提出された宣言書は共同発明者であったと主張された。地裁では事実関係に争いは無いとして後者の宣言書を採用し、公判を経ず、被告に略式判決*6を認めた。この矛盾する宣言書の存在にもかかわらず略式判決を認めたことが妥当であったか否かが争われた。

(2)一被告に対する譲渡人禁反言が認められるか
 被告A社には譲渡人禁反言が生じる可能性があるところ、被告S社には譲渡人禁反言が生じない。CAFCでは、一被告の譲渡人禁反言の有無にかかわらず、他の被告がなした無効の主張により、特許全体が無効となるか否かが争われた。

4.CAFCの判断

(1)矛盾する宣言書に関し、主要な事実上の争いがある
 CAFCは原告の主張を認めた。被告はJorgenson及びPichlが共同発明者であるとの宣言書を提出し、一方、原告は審査過程においてJorgensonが単独発明者であるとの宣言書を提出した。このように、555特許が102(f)のもと有効であるかどうかを決定するに重大な矛盾する証拠が存在する。つまり、Jorgensonが555特許の単独発明者であるか、Jorgenson及びPichlによる共同発明であるかどうかに関する事実に争いがあることから、公判を経ずになした略式判決は誤りであり、CAFCは、地裁の略式判決を差し戻した。

(2)他の被告に譲渡人禁反言が適用されない場合でも、原告に一被告に対する譲渡人禁反言の抗弁が認められる
 CAFCは譲渡人禁反言の有無を考慮せず略式判決をなした地裁の判決を差し戻した。被告S社に譲渡人禁反言は生じないが、被告A社に譲渡人禁反言が生じる可能性がある以上それを検討する必要があり、被告S社に譲渡人禁反言が適用されないといって直ちに特許を無効とするのは誤りであるとした。被告A社は555特許の譲渡人ではなく、また、Jorgenson及びPichilは被告A社に関与するものの雇用関係はない。CAFCは地裁に本事件における状況において、譲渡人禁反言が生じるか否かを再度審理するよう命じた。

5.結論

 CFACは、発明者の問題に関する事実に争いがあるとして、公判を経ずに略式判決をなした地裁の判決を差し戻し、また被告A社に対する譲渡人禁反言が生じるか否かを判断するよう命じた。

6.コメント
 事業譲渡、合併及び技術者の転職の増加等により、特許権及び営業秘密に関する係争が増加している。本事件は発明に関与した者が属していたA社が被告となり、発明成立に無関係の被告S社も訴えられた。CAFCでは被告S社の存在にかかわらず、原告に一被告A社に対する譲渡人禁反言の抗弁を認めた。地裁では譲渡人禁反言が適用され得る範囲が明確になされると思われる。

判決 2005年6月20日

以 上

【関連事項】

判決の全文は下記のジョージタウン大学Law Centerのライブラリから閲覧することができます[PDFファイル]。

http://www.ll.georgetown.edu/federal/judicial/fed/opinions/04opinions/04-1395.pdf


【注釈】

*1 Checkpoint Sys., Inc. v. All-Tag Sec. S.A., 315 F. Supp. 2d 660 (E.D. Pa. 2004)
*2 37 C.F.R.§1.27に規定する宣言書は、PTOに対する手数料を減額させるものである(米国特許法41条(h))。
*3 次の各号の何れかに該当する場合を除き,誰でも特許を受けることができる。
 (f) 特許を得ようとする発明の主題が,自身で発明したものでない場合(特許庁HP http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/aippi/usa/pl/chap2.htm#law102)
*4 Westinghouse Elec. & Mfg. Co. v. Formica Insulation Co., 266 U.S. 342, 349 (1924); Mentor Graphics Corp. v. Quickturn Design Sys., 150 F.3d 1374, 1377 (Fed. Cir. 1998).
*5 Intel Corp. v. United States Int’l Trade Comm’n, 946 F.2d 821, 839 (Fed. Cir. 1991)
*6 略式判決(Summary Judgment)は事件の主要な事実に関して争いがない場合、公判(Trial)を経ることなく判決が下される。


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