<時の話題> |
ノーベル化学賞受賞者の特許出願 |
2002.11.1 門脇 俊雄 |
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2002年のノーベル化学賞にS製作所の研究者である田中耕一氏が選ばれました。 メーカにおける現役の技術者である同氏の特許出願状況を特許庁の電子図書館(IPDL)等を用いて検索してみました。発明者及び出願人を指定して検索した結果、特許出願として11件(その内、登録された特許は3件)を抽出できました(2002年10月現在)。 抽出した特許出願の「公開番号、発明の名称、登録状況、IPC(国際特許分類)、共同発明者状況」を一覧表として別記のとおりまとめてみました。 この一覧表の内容を基に、若干の分析をしてみます。 1:特許出願から見た研究開発テーマの状況 発明の名称、IPCから判断して、最初の出願公開(特開昭62−40150)以下、最近の出願公開(特開平10−50249)までの全てが、「質量分析」に関係するものか、または、その関連技術に関係するものと言えます。 したがって、開発テーマは入社(1983年4月)以降、ほぼ一貫して「質量分析」に集中していることが伺えます。このことは、「開発テーマの選択と集中」が実行されていることを示すものであり、研究開発をする者にとって多くの示唆を含むものと思われます。 2:特許出願から見た研究者としての経過状況 入社以来の約20年間で11件の特許出願件数ですから、平均すれば2年で1件の特許出願をしていることになります。2年に1件の特許出願(開発成果)件数は、研究者、技術者として、比較的多い方に属するものと思われます。 全11件中、単独発明は7件、共同発明は4件(4件中2件は筆頭発明者)となっていることから、11件中9件の特許出願において実質的に中心であったことを示します。 また、初期の2件においては、共同発明者の最後に名前が記載されていることから、中心的な立場ではなかったことが伺えます。しかし、この2件が研究者としての成長の過程において、特許に対する意識付けをもたらし、3件目以降の単独発明につながっているものと思われます。 3件目の特許出願からは、単独発明(または、共同発明の筆頭発明者)となっており、研究者、技術者としての独り立ちがなされたことを伺わせます。 新規なテーマに着手した場合に、3年程度の経験、助走期間が必要なことは、他の先端技術分野においてもしばしば見られることであり、氏の場合にも同様な経過をたどったことが伺えます。 3:ノーベル賞の授賞理由に該当する特許出願はどれか 選考委員会は特許番号を特定していませんが、受賞に直接関連する特許は4件目の特許第2569570号(特開昭63−318061)と思われます。 報道等においては、2件目の「レーザイオン化質量分析計用試料作成方法」を受賞関連出願として挙げているものがありますが、これは共同発明であり、しかも筆頭発明者ではないことから、関連する技術分野の先行技術ではあっても、授賞理由に直接該当する特許とは言えないと思われます。 したがって、「マトリックス」「金属超微粒粉」というキーワードがふくまれていること、時期的に一致することから、4件目の「固体クロマトグラフィ質量分析方法」が最も受賞に関係の強い特許出願であると思われます。 |
<公開特許出願一覧表>
出願公開番号 | 発明の名称 | 登録状況: 特許番号 |
IPC: 国際特許分類 |
共同発明者 状況 |
1)特開昭 62−40150 |
飛行時間型質量分析計 | H01J 49/ | 5名連名 (5番目に記載) |
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2)特開昭 62−43562 |
レーザイオン化質量分析 計用試料作成方法および 試料ホルダ |
1769145 | G01N 27/ | 2名連名 (2番目に記載) |
3)特開昭 63−318057 |
高分子ビーム発生装置 | H01J 37/ | 単独 | |
4)特開昭 63−318061 |
固体クロマトグラフィ質量 分析方法 |
2569570 | H01J 49/ | 単独 |
5)特開昭 63−318064 |
質量分析計 | H01J 49/ | 単独 | |
6)特開平 2−158048 |
質量分析装置 | H01J 49/ | 2名連名 (筆頭) |
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7)特開平 3−30249 |
イオン検出器 | H01J 49/ | 単独 | |
8)特開平 4−298947 |
質量分析装置 | 3097148 | H01J 49/ | 単独 |
9)特開平 10−188880 |
MS/MS分析装置 | H01J 49/ | 単独 | |
10)特開平 10−90226 |
ペプチドのアミノ酸配列 決定方法 |
G01N 27/ | 単独 | |
11)特開平 10−50249 |
質量分析装置 | H01J 49/ | 2名連名 (筆頭) |
以 上
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