「医療行為」の特許性

門脇俊雄  2003.9.2 


★「人間を手術、治療又は診断する方法」は特許になる★
 特許庁は、「人間を手術、治療又は診断する方法」(人間を手術等する方法)については、「産業上利用することができる発明」に該当しないとして、原則的に特許の保護対象から除外してきました。しかし、最近の医療技術の進展に伴い、従来の判断基準では保護が十分になされない例が生じているとして、保護対象の範囲を拡張するための検討をしていました。検討の結果、「人間を手術等する方法」の保護内容(審査基準)が改訂され、平成15年8月7日以降に審査される出願について適用されます。

★特許対象とならないものの例★
 人間から採取したものを採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法(例:血液透析方法)は、医療行為そのものであるとして保護されません。

★「遺伝子組換え製剤、培養皮膚シート等」の製法は保護される★
(1)人間から採取したものを原材料として医薬品(例:血液製剤、ワクチン、遺伝子組換製剤)又は医療機器(例:人工骨、培養皮膚シート等の、身体の各部分のための人工的代用品又は代替物)を製造するための方法は、採取した同一人に治療のために戻すことを前提にして処理する方法であっても、保護の対象とされます。(今回の改訂点)
(2)医療機器が有する機能を方法的に表現したものであって、かつ、特許請求の範囲に直接人体に適用する工程が含まれていない場合(例えば装置内の制御プロセスに止まる場合)は、産業上利用することができる発明に該当し、特許の対象とされます。(今回の改訂点)
(3)人間から採取したもの(例:血液、尿、皮膚、髪の毛、細胞、組織)を処理する方法、又はこれを分析するなどして各種データを収集する方法。

※なお、「人間を手術等する方法」に関する審査基準の詳細は、特許庁ホームページ(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/iryou_sinsa_kijyun.htm)<2003年8月7日更新>を参照してください。 

>>>>>「阪神優勝」続報<<<<<
 先月掲載の商標“阪神優勝”譲渡交渉について、本交渉は決裂したとのニュースが入りました。但し権利者側の立場からみた報道内容と球団側の立場から見た報道内容とが混じり、現時点までの経緯が明確ではありません。           
以 上

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