実用新案制度の改正案

田中雅巳 2004.4.1 


 現行の実用新案制度は、出願された発明の内容を詳細に審査することなく権利を登録します。従って、早期に権利が登録されるというメリットがある反面、特許出願への変更が登録前までの短い期間内に限られるというデメリットがあります。また、実用新案権取得後は、クレームの訂正が実質的にできないというデメリットや、権利の存続期間が特許権に比べて短いというデメリットがあります。
 これらのデメリットが影響し、2002年の実用新案登録出願の件数は8千件強(特許出願は約42万件)という低水準になっています。
 そこで、実用新案制度の魅力を高めるための改正案が取りまとめられ、閣議決定されました。

改正案の主要な点
(1)実用新案登録に基づく特許出願制度の導入
実用新案登録を基礎として特許出願を行えるようにする。
   現行の実用新案制度は、登録前の場合に、実用新案登録出願を特許出願に変更することが可能ですが、早期に権利が登録(現在約5ヶ月)されるため、変更可能な時期が非常に短くなっています。このため、特許出願に変更したいと考えた場合でも、時期的に変更することが不可能な場合が多く、実用新案制度が使い難いものになっています。
(2)訂正の許容範囲の拡大
所定の期間内において1回に限りクレームの減縮等の訂正を行えるようにする。
   現行の実用新案制度は、実用新案権取得後のクレームの訂正が実質的にできないため、実用新案制度が使い難いものになっています。
(3)存続期間の延長
「出願から6年」を「出願から10年」へ延長する。
   現行の実用新案権の存続期間が特許権の存続期間(出願から20年)とかけ離れていることと、諸外国(ドイツ、韓国、中国)の実用新案権の存続期間は「出願から10年」であることとが考慮されています。
 現行の実用新案制度は、確かに使い難い点がありますが、権利を取得する目的によっては実用新案制度のメリットを活かせる場合があります。発明を特許出願とすべきか、実用新案登録出願とすべきかは、お気軽に河野特許事務所までご相談ください。

以 上

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