年末年始の恒例行事といえば紅白歌合戦ですが、ここにも著作権の影響が出ていたことにお気づきでしょうか。出場予定歌手の一人が、その刊行物の中で第三者の著作物を模倣したということで出場を辞退したのです。現実には、第三者の著作物を全く活用することなく著作物を創作することは稀です。この場合、適法に引用するにはどうすれば良いのでしょうか?
1.適法な引用
例えば技術論文では、何らかの文献を引用することを回避することは難しいのが現状です。しかし、引用した文献の出所を明確にしておくことで、引用文献の内容を変えずに引用することができます(著作権法第32条)。このようにすることで、批判論文にも引用することができます。
しかし、例えば自分に都合の良い部分だけを部分引用する等の不公正な姿勢は慎まなければ適法な引用と判断されない場合も有ります。例えば著作者の人格を傷つけるような改変著作物を創作した場合には、同一性保持権等の著作者人格権を侵害することになり、300万円以下の罰金という厳しい刑事罰が適用されます(著作権法第120条)。
2.ソフトウェアの開発委託では?
プログラム作成を他社へ委託した場合、著作権は、原則として委託先企業でなく、プログラムを作成した社員個人でもなく、社員に対して業務命令を出した受託先企業に帰属します。委託先企業が著作権を取得するためには、受託先企業との間で譲渡契約を締結する必要があります。しかし、上述した著作者人格権は、契約によっても受託先企業から他者へ譲渡することができません。したがって、受託先企業が作成したプログラムをそのまま使用する場合には何等問題は生じませんが、受託先企業の承諾を得ることなくプログラムを改変した場合には、上述した問題に巻き込まれるおそれが生じるのです。
このように著作者人格権は、著作物を創作した者に帰属し、他者へ譲渡することができない権利です。したがって、他人の著作物を引用する場合、著作物が何であるかを問わず、他人の著作物を改変せず、他人の名誉等を傷つけず、出所を明らかにしておくことが必要です。引用が適法か否か判断することが困難である場合には使用許諾契約を、著作物の改変が必要な場合には改変許諾契約を、それぞれ締結するよう心がけてください。
◆著作権に関する使用許諾契約・改変許諾契約等の締結時にどのような注意点が必要か詳細に関しましては、お気軽に河野特許事務所まで御連絡下さい。
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