「一太郎」判決に見る特許権侵害の成否
(松下電器産業対ジャストシステム)


野口 富弘 2005.3.1


ジャストシステムの「一太郎」、「花子」(以下、被告製品)に搭載された「バルーンヘルプ」機能が、松下電器産業の特許権(特許第2803236号)を侵害するとして、東京地裁は、被告製品の製造販売停止を認めました。以下に、その内容をご紹介します。

☆松下電器産業の特許発明(以下、本件発明)とは
「アイコンの機能説明を表示させる第1のアイコン」の指定に引き続く「情報処理機能を実行する第2のアイコン」の指定に応じて、第2のアイコンの機能説明を表示する情報処理装置及び情報処理方法。

☆東京地裁の判断
@「アイコン」とは? 東京地裁は、「アイコン」とは、「表示画面上に、各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して、コマンドを処理するもの」であるとして、「マウスの絵」及び「?」を組み合わせた「ヘルプモード」ボタンを「アイコン」であると認定しました。
 昨年8月に、東京地裁の同じ裁判長は、ジャストシステムの家計簿ソフトに搭載された「バルーンヘルプ」機能が、松下電器産業の同じ特許権を侵害するか否かの裁判で、「アイコン」について同じ認定をした上で、「?」ボタンを、デザイン化されていない単なる「記号」や「文字」であるから、「アイコン」ではないと判示しました。
 「マウスの絵」の有無で「アイコン」に該当するか否かの判断が分かれました。
A間接侵害が成立するか? 東京地裁は、被告製品をインストールしたパソコン及びその使用は、本件発明の技術的範囲に属するもの(a)であると判示しました。その上で、被告製品は、「被告製品をインストールしたパソコン」の生産に用いるもの(b)であり、本件発明による課題の解決に不可欠なもの(c)であり、「日本国内において広く一般に流通しているもの」ではなく(d)、被告は本件発明が特許発明である(e)こと及び被告製品が本件発明の実施に用いられる(f)ことを知りながら(g)、業として被告製品の生産等を行った(h)ものとして、いわゆる間接侵害を認めました。

☆特許権侵害の影響
ソフトウエア製品の部分的な機能に関する技術であっても、権利行使をされるという一例です。部分的な機能であるが故に、代替技術(マウスの絵を削除)で侵害を回避できますが、「侵害品」というマイナスイメージを払拭するには、困難な場合があります。

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以 上

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