間接侵害〜もう一つの侵害

廣田 由利 2005.10.1


1.特許発明の一部を実施する行為
X社が、「部品Aと部品Bとを備える製品C」に係る発明について特許を有する場合に、X社に無断で甲社が「製品C」を製造、販売すれば、甲社の行為はX社の特許権を直接侵害することになるので、X社は、「製品C」の製造、販売の中止を求めたり、損害賠償を請求する訴えを裁判所に起こすことが出来ます。では、甲社がX社に無断で部品Aを製造、販売している場合はどうでしょうか。特許発明の一部のみを実施(製造等)することは、特許発明を実施することには該当しませんので、X社は甲社に対し直接侵害していると訴えることは出来ません。

2.間接侵害
しかし、甲社が製造した部品Aを乙社に販売し、乙社が部品Aと部品Bとを組み立てキットとして市場で販売し、これを購入した消費者が家庭内で部品Aと部品Bとを組み立てて製品Cを得ている場合に、このまま放置しておくと、X社に損害が発生します。事業としてではなく、家庭内における製造(組み立て)ですので、特許法上、X社は消費者を訴えることが出来ません。特許法においては、甲社の行為のように、直接侵害が成立しない場合でも、これをそのまま放置すると特許権の保護が不十分となることがあることから、所定の行為を、特許権を侵害するものとみなす旨、規定されています。これが間接侵害という侵害態様です。

3.間接侵害が認められる条件
間接侵害が認められるためには、上記の例であれば、「部品A」が「製品C」の製造にのみ用いられ、他の製品には用いられないことが必要です(特許法第101条第1号)。また、他の製品に用いられる可能性があっても、@「部品A」を用いて「製品C」を得ることにより初めて、これまでの製品では問題であったことが解決されること、A甲社が「製品C」が特許発明であること、自ら製造等する「部品A」が他者により「製品C」の製造等に用いられることを知っていたこと の条件を満たす場合は、間接侵害に該当するとされています(特許法第101条第2号)。

◆侵害について何かご相談されることがございましたら、河野特許事務所までお問い合わせください。

以 上

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