1.ジャスト対松下 判決確定!
巷の話題となっていましたジャストシステム対松下電器産業のいわゆる「一太郎裁判」が遂に決着しました。2005年9月30日、知的財産高等裁判所は、松下電器産業のアイコン特許(特許番号第2803236号)を無効とし、松下電器産業の差止請求を棄却しました。松下電器産業が上告しなかったことから本判決は確定し、ジャストシステムはこれまで通り「一太郎」及び「花子」を製造販売することができることとなりました。
2.訴訟でも特許無効を積極的に判断
本判決で注目すべき点は2つあります。1つは、司法判断において、行政処分である特許の無効を判断し、権利行使不可能と判断した点です。2000年4月11日の最高裁キルビー判決以来、侵害訴訟において特許が無効か否かが争われるようになりました。今回の判決はより積極的に争われていく傾向に有ることを示唆しているものと考えます。従って、権利者には権利行使により慎重さが要求され、被告は、現在では周知であると考えてしまいがちな技術であっても、特許無効の主張のために裁判の初期において漏れなく証拠(書証)として開示していくことが重要となります。
3.物と方法とで権利行使に違いがあるか?
もう1つは、装置のクレームの場合にはコンピュータプログラムに対して権利行使できるが、方法のクレームの場合にはコンピュータプログラムに対して権利行使できないという判断を、裁判所が初めて下した点です。すなわち、「一太郎」をパソコンにインストールすることは特許の「情報処理装置」の「生産」に該当し、「一太郎」は特許の「情報処理装置」の生産に用いる物に該当すると判断されています。一方、「一太郎」は特許の「情報処理方法」の使用に用いる物に該当しないと判断されたのです。
本判決は、新設された知財高裁での初の大合議判決ですので、今後の地裁での判断にも大きく影響を与えることは必至です。しかし、1997年に記録媒体の発明が保護対象として認められ、2002年の法改正により「プログラム」の発明が「物」の発明として保護されるようになっております。したがって、今後の実務においては、積極的に「プログラム」の発明を活用することにより、今回の訴訟で生じたような権利解釈問題の発生を未然に防止することができ、確実な権利保護が期待できるものと考えます。
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