PCT国際出願制度の活用法
野口 富弘 2006.1.1
外国へ特許出願する場合、各国特許庁へ直接出願する方法とPCT(特許協力条約)国際出願する方法があります。例えば、出願する国の数が2〜3ヶ国であり、早期に権利化したい場合には、日本にした特許出願に基づいてパリ条約の優先期間を利用して直接出願するのがよいでしょう。しかし、外国へ特許出願する場合、特許を取得したい国がいくつあるか、どれだけ早期に権利化をしたいか、特許出願にどれだけ投資可能か、発明の技術的優位性がどの程度あるのか、などを検討した上で、いずれかの方法を選択する必要があります。PCT国際出願制度をどう活用すればよいのでしょうか?
@ 128ヶ国分の特許出願の束 一つのPCT国際出願で、あたかも128ヶ国(PCT締約国)に特許出願したかのように各国での出願日を確保できます。 A 簡便な出願手続 日本特許庁に手続きすることができます。また、パリ条約の優先期間12ヶ月ぎりぎりのタイミングでも外国語でなく日本語で出願できます。 B 優先日から30ヶ月の国際段階 各国特許庁への手続継続(国内移行)が、優先日から30ヶ月の猶予があります。 C 先行技術調査結果の取得 新規性・進歩性などの特許性の判断材料として有用な国際調査報告書及び国際調査機関の見解書を国際段階の早い時期(優先日から16ヶ月以内)に入手できます。 D 出願費用の節減 PCT国際出願に要する費用は、後に権利を取得したい締約国の数に関わらず均一化されています。また、各国で必要となる費用を国内段階に移行するまでの間、先送りすることができます。また、予め日本と外国で特許出願する予定がある場合、PCT国際出願をすることで、日本国内の特許出願に要する費用を節約できます。 ☆戦略的な活用方法
@ 国際段階の30ヶ月の猶予を活用する 各国への国内移行までの30ヶ月の猶予を、例えば、研究開発型の企業では、発明の市場性調査を行うための期間として、また、大学・公的研究機関では、研究成果としての特許を製品化し得るパートナー企業を国際的に探すための期間として、海外市場に展開する企業では、製品を製造・販売し、模倣品から自社製品を保護したい国を選択する期間として活用することができます。
A 国際調査報告書等を活用する 中小企業では、予め関連する先行技術を調査することが困難である場合でも、国際調査報告書及び国際調査機関の見解書を入手することにより、先行技術調査能力を補完することができます。また、国際調査報告書等は、国際的な統一基準で作成されますので、特許性の判断材料として活用することができます。 |
以 上 |