米国特許法規則改正案の概要について

河野英仁 2006.1.20


 米国特許商標庁は1月3日米国特許法規則の改正案を公開した。改正案は以下のとおりであるが、いずれも審査効率の向上を図ることを意図したものである。5月3日までパブリックコメントを受け付け、その後本格的な改正を行う見込みである。改正の概要は以下のとおり。

1.2回目以降の継続出願の制限
 2回目以降の継続出願、一部継続出願(CIP)及び継続審査請求(RCE)を行う場合、この段階で示す補正、反論及び証拠がなぜ前回提出・主張されなかったのかを示す書面が必要となる。

2.2重特許の推定
 出願人が、有効出願日が同じであり、また発明者が同一、さらに重複した開示内容をもつ出願を複数なした場合、特許性において区別不可能なクレームを含むと推定される。この場合、出願人は特許性において区別可能なクレームであることの説明、または、ターミナルディスクレーマの提出、いずれかによる反論を行う必要があり、さらにこれら抵触する出願が維持されるべき理由を説明しなければならない。
 これを回避するためには、有効出願日を同じくする出願(前後2ヶ月以内の出願を含む)に関する情報を、出願日から4月以内(国際特許出願については国内移行後4月以内)に提出しなければならない。

3.代表クレームの特定
 第1回目の審査においては、代表クレームのみが審査の対象となる。この代表クレームとは、全ての独立クレーム及び出願人が指定した従属クレームである。出願人が指定しなかった従属クレームは審査の対象とならない。

4.審査補助書面(ESD: Examination Support Document)の提出
 独立クレームが10以上の場合、または、代表クレームが10以上の場合、審査補助書面を提出しなければならない。

コメント
 継続出願の制限に関して米国特許商標庁は、改正提案書の中でしきりに継続出願の数を抑制することが目的ではないと主張している。むしろIn re Bogese, 303 F.3d 1362 (Fed. Cir. 2002)で判示されたように、悪意で延々と継続出願が繰り返され、その結果審査が遅延する事態を防止することを目的としている。

 どの程度の内容の書面を提出する必要があるか現段階では不明である。しかし、例えば2回目以降の継続審査請求を行う際、新たな先行技術が審査官から提示されていることが多いと想定されるので、この場合、「第1回目の継続審査請求時においてはかかる先行技術が存在していなかったため、2回目になす補正・意見の主張ができなかった」と主張すればよいものと考えられる。
 しかし、戦略的に他社の製品開発状況を見ながら、これにあわせて分割出願を繰り返すことは困難になると想定される。第1回目の継続出願時において、考えられ得るあらゆる形態のクレームを事前に作成しておくことが重要になるであろう。
 10を超える代表クレームの全てについて、早期に権利化を図る必要がある場合、審査補助書面を提出する意義がある。しかし、この審査補助書面には、出願人による調査レポート、引用技術との比較、特許性に関する言及等を記載する必要があり、その負担は大きい。なお、他国のサーチレポートは原則として提出することはできない。
 上記内容はあくまで提案であるので、後日正式に施行される規則に注目する必要がある。

米国特許商標庁のHPへのリンク
http://www.uspto.gov/web/offices/com/speeches/06-01.htm

以 上

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