〜他社の特許発明を基礎とした技術〜
新井 景親 2007.2.1
技術開発の多くは自社の先行技術を改良して行われますが、新たな技術分野を開拓するために、他社の特許発明を基礎として技術開発をする場合があります。この場合の留意点について説明します。 @ 他社特許発明の構成の一部を置換するとき 例えば他社特許発明が「AD変換器を用いたカメラの電気シャッター(以下他社発明)」で、実施例にはAD変換器として「電圧―周波数形AD変換器」が挙げられており、自社が開発しようとしている技術が「電圧―時間形AD変換器(以下時間形)を用いたカメラの電気シャッター(以下自社発明)」であるときについて説明します。 (@)「時間形」はAD変換器であることに変わりはなく、原則的に「自社発明」は「他社発明」に含まれ、「自社発明」の実施は他社の特許権を侵害するため、技術開発を進めるべきではないでしょう。 (A)「時間形」が他社の特許出願時に周知技術でない、又は周知技術であるが「自社発明」が「他社発明」にない効果を奏する場合には、例外的に「自社発明」が「他社発明」に含まれないときがあります。技術開発を進めるのは、弁理士等の専門家を交えて協議し、「自社発明」が「他社発明」に含まれないという結論を得た場合に限るべきでしょう。 A 他社特許発明の構成に新たな構成を付加するとき 例えば、他社特許発明が「パワーステアリング用モータ(以下モータ)」で、自社が開発しようとしている技術が「車速に応じて回転を制御する制御手段を有するパワーステアリング用モータユニット(以下モータユニット)」であるときは、「モータユニット」は「モータ」に制御手段を付加した構成であり、「モータ」の構成を全て備えるので、「モータユニット」を製造した場合には、他社の特許権を侵害します。 調査の結果「モータユニット」は公知技術でないと判明し、「モータユニット」には車速に応じてモータの回転を増減し調整するという「モータ」にはない効果が発生しており、進歩性があると判断されるときには特許登録要件を満たすと考えられます。 「モータユニット」が「モータ」の短所を著しく改善する技術であるときは、他社との間でクロスライセンス契約を結び、「モータユニット」を実施できる場合があり、「モータユニット」の開発初期段階で特許出願を行い、他社とクロスライセンスの協議を行ってから、技術開発の進行・断念を判断することが考えられます。 ◆他社の特許発明を基礎とした技術開発の詳細については、御気軽に河野特許事務所までお問い合わせ下さい。 |
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