4 ネット上を流れる個人情報
種々の利用形態における流通個人情報は様々である。以下に考察してみる。
(1)E−mail
これには上述したように中身(内容たる事実)と、(外形的な事実)とがある。後者としては宛先、発信人、発信地、発信時間
IDコード パスワードなどがある。前者は@ーCの対象になり得る。後者は@ーBの対象になり得る。
(2)WWW又はホームページへのアクセス
アクセス者の外形的な事実及び取得情報が流通する。ホームページなどから情報を取得するに際しての外形的な事実は秘密にされるべき個人情報である。但し、不正行為は@だけが行為者にとって意味のあるものとなる。
ホームページの内容は秘密に値しない。しかしデータベースから取得したデータはそれとアクセス者との関連性に意味があるからその秘密は保持されるべきである。これと同じ意味で個人のホームページへのアクセスの履歴も秘密にされるべきである。
インターネットでのショッピングも実用化されている。発注者へオフラインで送付される物販のみならず、ソフトウエア、データ等オンラインで取引が完結するものもある。前者の取引において金銭支払いを先に要求する場合には販売者(を装う者)がBの行為を働いたり、第三者がAの行為を働いたりする虞れがある。後者では発注者からのクレジットカード番号の通知が必須である。これが@の対象になる。
発注者がCを働くことはいずれの場合にも起こり得る。
不正行為とは言えないが、買い物の履歴の蓄積が購買者が意識しないままに行われる。この蓄積情報が第三者に販売されることがあり得るが、これを禁じる手段は存在しない。
(3)インターネット以外のネット上の情報
a) 商業ネットなどでのフォーラムでの発言内容、BBSでの掲示内容
これらは本来公開を意図したものである。しかし、特定のメンバーだけを公開対象としている場合には第三者には見られたくない情報であることがある。思想、宗教が関連する場合にはこの傾向がある。その意味では守られるべき秘密の情報といえる。
b)金銭上の信用情報
クレジットカードの信用照会は店舗の電話機型端末機から電話線を介してクレジット会社のコンピュータへデータを送ることによって行われている。カード番号及びその信用情報が@の対象になる。
c)ファーム(ホーム)バンキング
取引情報、金銭価値自体が流通する。不正行為者にとって魅力的な情報であり、最も高い安全性が要求される。
d)その他
遠隔地へ送信される診察情報がある。経済的な利益、不利益とは無関係であるが、他人に最も知られたくない情報であろう。
オンデマンドビデオの視聴情報(履歴)も買い物情報と同様の経済的価値がある。
5 個人情報の保護
ネット情報全般の保護対策としては技術的保護、法律的保護が必要であることは言うまでもない。
技術的な保護としては物理的ガードと論理的ガードとがある。盗聴は1か所でも弱いところが有ればそこが狙われる。個人情報について見れば電話機端末が接続されている環境はきわめて脆弱である。信号線の分岐が極めて困難な光ファイバ幹線までの間には盗聴者が狙えるところはいくらでも存在する。インターネットのデータパケットは電話会社のネットを通るだけではなく、内国の法律の規制を受けないハードウエア、あるいは外国内のハードウエアを通過し得る。無防備な部分の存在が懸念される。また無線電話では情報がまきちらかされている。従って、物理的ガードは極めて困難ということができ、論理的ガード、つまり、暗号化による保護が適切であると考えられる。個人情報については個人ユーザが適切な価格で、また暗号化、復号化に長時間を要しないハードウエア、ソフトウエアの開発が待たれる。しかし、暗号化したデータはAの消去対策は不可能であるとしてもその秘密は守られる。
法律的保護については新しい通信利用形態に合わせた整備が必要である。特に経済的に、また力関係で弱者である個人についてその情報を守るための新しい規則が必要である。保護対策を通信、コンピュータ業界の自主規制に任していては個人は不利な立場に置かれる。一方、前述した種々の買い物などの通信履歴については情報提供者側から見れば極めて魅力的なデータである。これについてはそれが許されることを法律で明らかにするのが良いであろう。もちろんPOSシステムでのデータ収集と同様に匿名性を担保する事が必要であると考える。インターネットでの情報提供は基本的に無料である。有料情報の提供者、物品販売者は情報、物品の対価で経済的利益を受け得る。しかし無料の情報提供者は利用者から直接的利益は得られない。従って何らかの代償を得ることができてもそれは非難されるべきことではない。むしろその代償を、例えば買い物履歴などの有価値情報として得させることは健全なインターネットの発展に重要なことであると考える。
以 上
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