1.はじめに
特許権は属地主義の原則に基づき、国毎に発生し、当該国領域内でのみその効力が認められる1)。しかし、インターネットの普及により国境の概念が失われつつある。ソフトウェア・インターネット関連発明は、全世界に張り巡らされたインターネットを前提とした発明であり、属地主義を徹底するとその法的保護が失われるという問題が顕在化している。また、機械及び化学分野の発明と異なり、ソフトウェア発明は、ブロードバンド化と相まって安易に大量のコピーが世界中に配布されるという問題点もある。
インターネット技術及びソフトウェア技術でのナンバー1は米国であるといっても過言ではないだろう。プロパテントを標榜する米国でのインターネット・ソフトウェア関連発明に係る特許権の域外適用に関し、注目すべき判決が米国連邦巡回控訴裁判所なされた。Eolas Techs., Inc. v. Microsoft Corp2)(ブラウザ特許事件)においては、コンピュータプログラム製品がクレームされているところ、米国外でソフトウェアコードをインストールする行為が、構成部品の組み立てに該当し、米国特許法第271条(f)のもと特許侵害にあたると判断された。またNTP, INC., v. RESEARCH IN MOTION, LTD.3)(BlackBerry事件)においては、特許発明の構成要件の一部が米国外に存在するにもかかわらず、直接侵害であるとして米国特許法第271条(a)が適用された。
本稿では、これらの判例を分析すると共に、国境を越えたソフトウェア・インターネット関連発明の法的保護について検討を加える。
2.ブラウザ特許事件
(1)背景
Eolas Technologies Incorporated及びカリフォルニア大学(以下、原告)はWebブラウザに関するU.S. Patent No. 5,838,906(以下、906特許)を所有している。本発明は、Webページ内に特定のインタラクティブ・プログラムを組み込んで自動的に起動させる技術である。例えばWebページのHTML(Hypertext Markup Language)内に動画またはFlash等のプログラムを組み込んで記載しておき、Webページの表示と共にこれらのプログラムを自動的に起動させる。
1999年2月2日、原告は、Microsoft Corporation(以下、被告)のインターネットエクスプローラが906特許のクレーム1及び64)を侵害するとしてイリノイ州北地区連邦地方裁判所に提訴した。地裁では、
(i)非自明性(米国特許法第103条)
(ii)不公正行為
(iii)文言解釈、及び
(iv)米国特許法第271条(f)の解釈
について争われ、地裁は被告の主張を全て退け特許侵害との判決をなした5)。
被告はこれを不服として米国連邦巡回控訴裁判所(Court of Appeals for the Federal Circuit、以下CAFC)へ控訴した。
(2)争点
CAFCは、(i)及び(ii)に関しては地裁の決定を無効、差し戻しとしたが、(iii)及び(iv)に関しては地裁の判断を支持した。CAFCの判決後、各報道機関が主として争点(i)及び(ii)に関して「差し戻し命令」「地裁の判断覆る」等と大々的に報じたため、CAFCで支持された争点(iv)はそれほど注目されなかった。しかし、ソフトウェア関連発明の域外適用を論じる上で争点(iv)は極めて重要であることから、本稿では争点(iv)に着目して以下に論じる。
(3)事実関係
原告はオペレーティングシステムであるWindowsに搭載されるWebブラウザに関し、被告の米国内の販売のみならず、米国外での販売をも根拠に損害賠償請求を行った。その取引形態は図1に示すとおりである。
被告はGolden Master Disk(以下、マスターディスク)に本発明にかかる技術が搭載されたブラウザ及びオペレーションシステムのソフトウェアコードを書き込み、この数量限定のマスターディスクを米国外のOEM(original equipment manufacturers)先へ輸出した。米国外のOEMはマスターディスクに記録されたソフトウェアコードをコンピュータハードウェアにインストールし、インストール後のコンピュータをユーザに販売した。
906特許のクレーム6はコンピュータプログラム製品(computer program product)について権利化しているため、このプログラムが記録されたマスターディスクの輸出は米国特許法第271条(a)に規定する「販売」に該当することは明らかである。本事件では、米国外でマスターディスクに記録されたソフトウェアコードをコンピュータにインストールする行為が米国特許法第271条(f)に該当するか否かが問題となった。
(4)米国特許法第271条(f)
原告は米国外でのソフトウェアのインストール行為をも訴追すべく米国特許法第271条(f)を主張した。域外適用を規定する米国特許法第271条(f)は以下のとおりである。
「特許発明の構成部品の全てまたは要部を、米国内もしくは米国外へ許可なく供給し、または供給せしめた者は、そのような構成部品が、全体もしくは部分的に組み立てられていないが、米国内で組み立てられるような状態にあり、もし米国内で組み立てれば特許権を侵害するものであるとき、侵害の責任を負うものとする。ただし、積極的に組み立てを示唆している場合に限る。」6)
本法の趣旨はその立法過程を通じて理解することができる。本法は議会がDeepsouth事件最高裁判決7)を受けて1984年に追加したものである。Deepsouth事件では、エビの殻むき装置に特許が付与されており、特許権者の許可を受けていない製造者が、米国内で組み立ててられていない完成前の構成部品を輸出する行為が侵害とならないと判示された。議会はこの特許法の抜け穴を防ぐべく、完成前のセット部品の輸入または輸出行為を侵害行為とする第271条(f)を立法した。
本事件において被告は、Deepsouth事件は、物理的な機械の構成部品を取り扱っており、271条(f)の「構成部品」は物理的な構成部品に限定されるべきだと主張した。しかし、CAFCは第271条(f)の文言及び立法過程からこの議論を退けた。
CAFCは第271条(f)には「構成部品(components)」に関し「有形性(tangibility)」の要件を課しておらず、また立法過程を考慮しても「機械の構成部品及び他の構造的な組み合わせ」という限定を含んでいないと述べた。また、TRIPS協定第2章セクション5には
「発明地及び技術分野に関し差別することなく特許が与えられまた特許権を享受することができる」
旨が規定されている8)ことからも、ソフトウェア発明が米国特許法第271条(f)の適用外になるとはいえないと判示した。
また、マスターディスク上のソフトウェアコードはコンピュータ製品にインストールされ、コンピュータ製品の機能的な核となる9)ものであるから、ソフトウェアコードはコンピュータプログラム発明の「構成部品(components)」に該当すると判断した。
以上の理由により、ソフトウェアコードを米国外でコンピュータハードウェアにインストールする行為は、米国特許法第271条(f)に規定する部品の組み立てに該当すると判断された。すなわち、マスターディスクに記録されたソフトウェア(部品)をインストールして出荷用のコンピュータ(完成品)を完成させる毎に一侵害行為が成立することになる。そうして、原告の損害は、1侵害製品あたり1.47ドル、総額約550億円(約3億5千万ライセンス分に相当)の損害額が認定された。
(5)米国特許法第271条(f)から逃れることはできない
本判決が与える影響はソフトウェア発明にとって極めて大きい。米国においてソフトウェア発明を権利化しておけば、米国で開発したソフトウェアを米国外へ供給している限り、全世界で当該ソフトウェアをインストールする行為は米国特許法第271条(f)のもと侵害と認定される。本事件では、被告からOEM先へマスターディスクが物理的に供給される形態となっているが、ネットワークを通じてソフトウェアコードを提供する形態でも結果は同じである。例えば、米国で開発したソフトウェアを日本の子会社のサーバへ送信し、日本のユーザにこのサーバからソフトウェアをダウンロードさせる形態であっても、米国特許法第271条(f)に該当し、ダウンロード数分のロイヤリティの支払いが求められる。また、本事件の如くコンピュータにインストールされるソフトウェアのみならず、電化製品または自動車に搭載される制御用ソフトウェアにも、全世界の製品数、台数に応じて米国特許法第271条(f)に基づく損害賠償請求が認められ、世界中何処であろうと、これから逃れることはできない。
ソフトウェア発明は、コピーが容易であり全世界に一瞬にして流通する性質を有することから、国境を超える範囲にまで保護を拡大した本判決の意義は大きい。また本判決は日本企業にとっても有効に作用する。米国においても日本企業がソフトウェア発明を権利化しておくことにより、米国の競業他社が米国内で開発した製品をもとに米国外へマーケット拡大を試みたとしても、当該日本企業の米国特許権に基づき、米国内のみならず、域外適用を認める米国特許法第271条(f)の規定により、日本を含む米国外のマーケット拡大をも防ぐこともできる
製品の流通するマーケットにもよるが、ソフトウェア発明については、積極的に米国で権利化を図ることが極めて重要と考えられる。
(6)日本国特許法との比較
日本国外の複製行為に対して、ソフトウェア発明にかかる特許権の行使を認めた日本の判例は筆者の知る限り存在しない10)。
ここで問題となるのが、日本国で取得したソフトウェア発明にかかる特許権に、本判決と同様の効力が日本国外で認められるか否かである。従来、日本においてソフトウェア発明は、ソフトウェアの機能を実現する「装置」として権利化を図ってきたが、1997年の審査基準改定により、「記録媒体」クレームの記載が認められるようになった。さらに、2000年審査基準改訂(2002年特許法改正)によりコンピュータが果たす複数の機能を特定する「プログラム」自体を物の発明として請求項に記載することができるようになった(日本国特許法第2条第3項第1号及び同条第4項)。
仮想事例として本事件と同じく、日本国でソフトウェア発明にかかる特許権を取得したところ、侵害者が特許発明にかかるコンピュータプログラムを、インターネットを通じて米国に存在する米国子会社のサーバへ送信し、ここから米国ユーザのリクエストに応じてコンピュータプログラムのダウンロードを認めたと仮定する。
プログラムの米国子会社のサーバへの送信行為は日本国特許権の侵害行為であると容易に判断できるが(日本国特許法第2条3項、同68条)、米国子会社が米国サーバから複数の米国ユーザのコンピュータに、プログラムを配信する行為が日本国特許権の侵害といえるか否かが問題となる。
日本国特許法には米国特許法第271条(f)の如く域外適用を認める規定が存在しないが、以下の2とおりのアプローチが考えられる。
日本国特許法第101条に規定する間接侵害の趣旨は
「特許権侵害は、業を要件とするから、最終の組み立てのみを、個人的・家庭的に行わしめることができる物については、何人も(組み立て部品のメーカも)侵害の責を負うことができないという不都合11)」
を防止することにある。かかる趣旨に鑑み、ソフトウェアの機能を実現する「装置」について権利化されている場合、構成部品であるプログラムをインストールさせて当該装置を完成させる目的で、米国へプログラムを送信し、米国でこれを配信する行為を間接侵害と考えることができる。
もう一つは、「プログラム」について権利化している場合、プログラムを米国へ送信し、米国で配信する行為を一体として直接侵害として考えるアプローチである。侵害者が存在しない場合、特許権者はプログラムのダウンロードを日本に存在するサーバから米国ユーザのコンピュータに認めることにより、配信数に応じて利益を得ることができたところ、侵害者の米国へのプログラムの送信行為及び米国子会社を通じたユーザへの配信行為に基づき、配信数分の逸失利益が発生しているからである。
以上筆者の見解を述べたが、属地主義の原則を徹底させた場合、米国子会社の配信行為は日本国外で行われている以上、直接侵害とも間接侵害ともいえず、本事件で判示されたような域外適用は認められない可能性が高いと思われる。しかしながら、今後もソフトウェア技術及びインターネット技術は、予測もしない方向へ急速に発展するものと思われ、日本においても国境を越えたソフトウェア発明の法的保護を期待したい。
3.BlackBerry事件
インターネットが介在する発明は、国境を越えてシステムが構築されることが多い。従って構成要件A、B及びCからなるシステムに係る発明において、構成要件Cが国外に存在する場合に、特許権者がどのように訴追すればよいかが問題となる。BlackBerry事件では構成要件の一部がカナダに存在していたが、被告の行為を米国特許法第271条(a)に基づく直接侵害と認定し、差止め及び約58億円の損害賠償を認めた。以下に本事件を解説する。
(1)発明の内容
NTP, Inc.(以下、原告)は、既存の電子メールシステムに、無線ネットワークを統合し、モバイルユーザに無線ネットワーク下でpush型での電子メールの転送を行うシステムにかかるU.S. Patent5,436,960(以下,960特許)等5件の特許12)を有している。
既存の電子メールシステムは以下のように動作する。即ち、メーラーで作成された電子メールは送信者のコンピュータからSMTP(simple mail transfer protocol)サーバへ送信される。SMTPサーバは受信者のメールサーバを調べるためにDNS(domain name system)サーバに問い合わせる。そして、電子メールは受信者のメールサーバへ送信され、メールサーバ内のメールボックスに格納される。受信者はPOP3(post office protocol version 3)プロトコルを用いて、能動的にメールサーバにアクセスしメールボックスから電子メールをダウンロードする。これはpull型と呼ばれ、受信者自らメールサーバにアクセスして電子メールをダウンロードする必要がある。本発明は、既存の電子メールシステムはそのままに、さらに、無線ネットワークを介してハンドヘルド装置に電子メールをpush型により配信することを特徴としている。すなわち、受信者のメールサーバは電子メールをSMTPサーバから受信した場合、電子メールをメールボックスに格納すると共に、これを暗号化して配信サーバ(クレームでは「interface」)へ送信する。配信サーバは無線ネットワークを介してハンドヘルド装置へ電子メールを配信する。これにより受信者は電子メールをメールサーバにアクセスすることなくリアルタイムで受信することができる。
(2)BlackBerryシステム
カナダオンタリオに本社を置くResearch In Motion, LTD.(以下、被告)はBlackBerryシステム(以下、イ号システム)により、本発明と同様のサービスを提供している。その概略は第2図に示すとおりである。
送信者が送信した電子メールはSMTPサーバへ送信され、受信者のPOPサーバのメールボックスへ格納される。POPサーバは電子メールを受信した場合、電子メールをカナダに存在する配信サーバへ転送する。配信サーバは無線ネットワークを介してハンドヘルド装置へ電子メールを配信する。すなわち、受信者はコンピュータにより従来どおり電子メールをPOPサーバにアクセスしてダウンロードすることもでき、さらに、ハンドヘルド装置においてもリアルタイムで電子メールの受信を確認することができる。
ここで問題なのは、発明のポイントとなる配信サーバがカナダに存在し、メールの配信処理もカナダから無線ネットワークを通じて行われているということである。これ以外の、SMTPサーバ、POPサーバ、送信者・受信者のコンピュータ及びハンドヘルド装置は全て米国に存在する。
このように、イ号システムにおける配信サーバがカナダに存在するという点を無視すれば、イ号システムは、原告の主張するシステムクレーム全ての構成要件を具備している。
(3)米国特許法第271条(a)
原告は、被告のイ号システムは米国特許法第271条(a)に規定する直接侵害に該当すると主張した。
同条は
「本法に別段の定めがある場合を除き、米国内において特許の存続期間中に、特許発明を権限なく生産し、使用し、販売の申し出を行い、または販売した者は、特許を侵害したものとする。」
と規定している13)。被告は、イ号システムの配信サーバはカナダに存在するので、侵害活動の全てのステップが「米国内において」行われているという法定要件を満たさないと主張した。271条(a)は、特許の地域的範囲を限定しており、米国内において発生した特許侵害に対してのみ適用される14)。
(4)構成要件の一部が外国に存在するとしても、直接侵害となる
CAFCは、クレームの構成要件の一つ「interface」が、イ号システムの配信サーバに該当し、これが米国外に存在することを認めた上で、
a)他の被告のシステムは全て米国内に存在し、配信サーバを含む全ての装置は、全て米国で制御が可能であること、及び
b)被告イ号システムの使用による利益は米国内で享受することができること
を理由に、米国特許法第271条(a)に規定する「米国内における・・使用」に該当すると判示した15)。
すなわち、係争物がクレームの構成要件を全て具備し、その制御が国内で可能であり、かつ、国内でその発明の利益を享受することができるのであれば、構成要件の一部が国外に存在するとしても、直接侵害を問えることになる。
(5)ビジネス関連発明への適用
本判決は、プロパテント政策のもとブラウザ特許訴訟と同じく、インターネット関連発明を強固に保護するものといえる。域外適用を判示した本判決はまた数年前から急増したビジネス関連発明にも同様に適用され得ると考えられる。ビジネス関連発明に関しては、特許法上の保護対象に該当するか否かの判断、新規性・進歩性の判断及びその権利範囲解釈を巡って様々な議論がなされている。権利範囲解釈においては、域外適用も争点の一つとして論じられ、米国特許法第271条(g)(特許された方法により製造したものを輸入等する行為)、並びに、同条(b)及び(c)(間接侵害)による侵害を主張するというアプローチもなされている16)。
間接侵害も一つの方法であるが、米国では間接侵害(寄与侵害)が成立するためには、直接侵害の存在が必要とされる17)ところ、本判決は直接侵害である米国特許法第271条(a)を根拠にしている点で、その存在意義が大きい。特許権者は間接侵害を主張することに比べ、容易に侵害を主張し得よう。もっとも日本においては間接侵害(日本国特許法第101条)が認められるためには必ずしも直接侵害が必要とされていないため18)、また異なったアプローチが考えられるであろう。
本判決及びビジネス関連発明に関して、どの範囲まで拡張して域外適用が認められるかという点が今後の課題となる。本事件ではカナダに存在する配信サーバが電子メールを転送・配信する行為が問題となった。しかし、国外での行為がより多数であり、また国外での処理が発明の根幹をなす場合、本事件をそのまま適用できるか否かは疑問である。すなわち、多くのビジネス関連発明はCGI(Common Gateway Interface)プログラム等によりWebサーバ内で多くの処理が行われ、クライアントのWebブラウザでは条件の入力及び結果の表示が行われるに過ぎない場合が多い。このWebサーバが国外に存在し、さらには、Webサーバがアクセスするデータベースまでもが国外に存在する場合にまでも、国内における使用であるとして直接侵害を問えるであろうか。
筆者はWebサーバの国外での処理数及び国外のデータベースの存在にかかわらず、本判決と同じ趣旨、換言すれば、イ号システムの管理・制御が国内で実行でき、かつ、イ号システムを利用するユーザが国内でそのシステムによる利益を享受できる限り、直接侵害を主張し得ると考える。Webシステムの構築は、国内から国外へ容易にシフトすることができる。特許侵害を免れんとするこのような行為を認めるとすれば、ビジネス関連発明の特許権の効力を著しく減じることになるからである。
4.まとめ
本稿では、ソフトウェア及びインターネット関連発明に係る特許権の域外適用、さらにはビジネス関連発明への影響及び問題点について論じた。当該分野の技術進歩は急速であり、予想もしない新たな発明が生まれ、また想定外の行為について侵害の有無が問われるであろう。
ビジネス関連発明を含むソフトウェア及びインターネット関連発明に携わる実務者としては、相次いでなされる新たな判例及び法改正をアップデートしておくと共に、明細書作成実務にフィードバックさせることが重要となる。本稿がソフトウェア及びインターネット関連発明を取り扱う実務者の参考となれば幸いである。
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注
1)特許権についての属地主義の原則とは、各国の特許権が、その成立、移転、効力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められることを意味するものである(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁)。
2) Eolas Techs., Inc. v. Microsoft Corp 2005 WL 475391 (Fed. Cir. 2005)
3) NTP, INC., v. RESEARCH IN MOTION, LTD. 2004 U.S. App. LEXIS 25767 (Fed. Cir. 2004)
4)906特許のクレーム6は以下のとおり。
A computer program product for use in a system
having at least one client workstation and
one network server coupled to said network
environment, wherein said network environment
is a distributed hypermedia environment,
the computer program product comprising:
a computer usable medium having computer
readable program code physically embodied
therein, said computer program product further
comprising:
computer readable program code for causing
said client workstation to execute a browser
application to parse a first distributed
hypermedia document to identify text formats
included in said distributed hypermedia document
and to respond to predetermined text formats
to initiate processes specified by said text
formats;
computer readable program code for causing
said client workstation to utilize said browser
to display, on said client workstation, at
least a portion of a first hypermedia document
received over said network from said server,
wherein the portion of said first hypermedia
document is displayed within a first browser-controlled
window on said client workstation, wherein
said first distributed hypermedia document
includes an embed text format, located at
a first location in said first distributed
hypermedia document, that specifies the location
of at least a portion of an object external
to the first distributed hypermedia document,
wherein said object has type information
associated with it utilized by said browser
to identify and locate an executable application
external to the first distributed hypermedia
document, and wherein said embed text format
is parsed by said browser to automatically
invoke said executable application to execute
on said client workstation in order to display
said object and enable interactive processing
of said object within a display area created
at said first location within the portion
of said first distributed hypermedia document
being displayed in said first browser-controlled
window.
5)Eolas Techs., Inc. v. Microsoft Corp., No. 99 C 0626 (N.D.III. Dec. 29, 2000).
6)ヘンリー幸田著「米国特許法逐条解説 第3版」社団法人発明協会p249
7)Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518, 92 S.Ct. 1700, 32 L.Ed.2d
273 (1972).
8)TRIPS協定第27条(1)
9)Imagexpo, L.L.C. v. Microsoft, Corp., 299 F.Supp.2d 550, 553 (E.D.Va.2003)
10)特許権の域外適用に関連する事件としてFM信号復調装置事件最高裁判決がある(平成12年(受)第580号 損害賠償請求事件)。しかし、米国外での行為であるという点では共通するが、FM信号復調装置事件は米国特許権に基づく差止め及び廃棄請求を日本国裁判所において求めている点で、米国特許権に基づく損害賠償請求を米国裁判所に求めた本事件とは相違する。同判決は「我が国は,特許権について前記属地主義の原則を採用しており,これによれば,各国の特許権は当該国の領域内においてのみ効力を有するにもかかわらず,本件米国特許権に基づき我が国における行為の差止め等を認めることは,本件米国特許権の効力をその領域外である我が国に及ぼすのと実質的に同一の結果を生ずることになって,我が国の採る属地主義の原則に反するものであり,また,我が国とアメリカ合衆国との間で互いに相手国の特許権の効力を自国においても認めるべき旨を定めた条約も存しないから,本件米国特許権侵害を積極的に誘導する行為を我が国で行ったことに米国特許法を適用した結果我が国内での行為の差止め又は我が国内にある物の廃棄を命ずることは,我が国の特許法秩序の基本理念と相いれないというべきである」と判示した。
11)吉藤幸朔著 熊谷健一補訂「特許法概説 第12版 有斐閣 p465
12)その他4件の特許は、U.S. Patent 5,625,670、5,819,172、6,067,451、及び6,317,592である。
960特許のクレーム1は以下のとおりである。
1. A system for transmitting originated information
from one of a plurality of originating processors
in an electronic mail system to at least
one of a plurality of destination processors
in the electronic mail system comprising:
at least one gateway switch in the electronic
mail system, one of the at least one gateway
switch receiving the originated information
and storing the originated information prior
to transmission of the originated information
to the at least one of the plurality of destination
processors;
a RF information transmission network for
transmitting the originated information to
at least one RF receiver which transfers
the originated information to the at least
one of the plurality of destination processors;
at least one interface switch, one of the
at least one interface switch connecting
at least one of the at least one gateway
switch to the RF information transmission
network and transmitting the originated information
received from the gateway switch to the RF
information transmission network; and wherein the originated information is transmitted
to the one interface switch by the one gateway
switch in response to an address of the one
interface switch added to the originated
information at the one of the plurality of
originating processors or by the electronic
mail system and the originated information
is transmitted from the one interface switch
to the RF information transmission network
with an address of the at least one of the
plurality of destination processors to receive
the originated information added at the originating
processor, or by either the electronic mail
system or the one interface switch; and
the electronic mail system transmits other
originated information from one of the plurality
of originating processors in the electronic
mail system to at least one of the plurality
of destination processors in the electronic
mail system through a wireline without transmission
using the RF information transmission network.
13)ヘンリー幸田・前掲p247 |