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中国における改正専利法経過規定のお知らせ
及び法改正後の注意点

執筆者 弁理士 河野英仁
2009年10 月02 日

1.中国知識産権局は9月29日、10月1日より施行された改正専利法に関する経過規定を発表した。注意点は以下のとおりである。

 経過規定第2条によれば、
2009年10月1日より前の出願及び当該出願に対し付与された特許権には、改正前の専利法が適用される。
2009年10月1日以降(同日含む)の出願及び当該出願に対し付与された特許権には、改正後の専利法が適用される。
 すなわち、改正前に出願され未だ権利が成立していない案件に対する特許要件、審査手続き及び特許後の無効宣告理由については原則として改正前の専利法が適用される。優先権を伴う場合、優先日を基準に判断する(条例案第12条)。

 ただし、以下の規定は例外として、2009年10月1日より前の出願及び当該出願に対し付与された特許権にも、改正後の専利法が適用される。代表的な規定は以下のとおり。

(1)強制的実施権 改正専利法第6章(第48条~第58条)
 強制的実施権については改正日前の出願に基づく特許権に対しても、改正専利法が適用される。

(2)特許権侵害(第11条、第62条、第69条及び第70条)
 特許権侵害行為に対しては、改正日前の出願に基づく特許権に対しても、改正専利法が適用される。適用される条文は、
第11条(特許権侵害行為、意匠の販売の申し出を含む)
第62条(自由技術の抗弁)
第69条(特許権の侵害とならない場合、国際消尽論を含む)
第70条(損害賠償責任を負わない場合、販売の申し出を含む)

(3)中国代理事務所(第19条)
 改正専利法第19条の規定が改正されたことにより、渉外事務所以外の事務所にも事件を依頼することができる。
 この改正専利法第19条も例外規定となる。すなわち、改正日前にした出願に基づく事件(中間処理等)であっても、任意の中国代理事務所に事件を委託(移管)することができる。

2.その他の注意点
 知識産権局はさらに以下の点について注意を喚起している。実施条例の内容は未確定であるが、出願人が最低限注意すべき点を示したものである。

以下に代表的な注意点を紹介する。

(1)特実重複出願(改正専利法第9条、条例案第43条)
 同一出願人が同日に同一発明(考案)について特許出願及び実用新案登録出願をする場合、それぞれの出願時に同日出願であることを示す旨の声明を記載しなければならない。

(2)保密審査(専利法第20条/条例案第8条、第9条及び第10条)
 中国国内で完成した発明または実用新案を外国へ出願する場合、事前に保密審査請求を行わなければならない。保密審査請求を怠った場合、中国で特許権が認められなくなるからである(専利法第20条)。中国国内で発明が発生する可能性のある企業は注意すべき条文である。

 条例案によれば保密審査請求のパターンは以下の3つとなる。
パターン1:直接外国出願(外国PCT受理官庁含む)を行う場合
 中国国内へ出願せずに、直接外国出願を行う場合、事前に国務院特許行政管理部門へ保密審査請求を行う必要がある。その際、詳細な技術説明を添付することが必要とされる。
パターン2:先に国務院特許行政管理部門へ国内出願し、その後外国出願する場合
 最も多いパターンと考えられる。出願と同時に保密審査請求を行うか、出願後に別途保密審査請求を行えば足りる。
パターン3:国務院特許行政管理部門へ直接PCT出願する場合
 中国においてPCT出願する場合、出願と同時に保密審査請求したものとみなされるため、特段手続きは不要である。

 条例案によれば、以下の如く審査が行われる。保密審査請求後、審査が行われ、国家安全上問題があると判断された場合、請求後3ヶ月以内に通知がなされる。安全上問題なければ、外国出願が可能である。
 軍事技術等により、3ヶ月以内に通知を受けた場合、請求後5ヶ月以内に保密すべきか否かの決定通知がなされる。ここでも5ヶ月以内に通知がなければ外国出願を行っても良い。

(3)意匠の簡単な説明(専利法第27条第1項)
 意匠登録出願の際には、意匠の簡単な説明の提出が必要となる。意匠の簡単な説明は権利範囲解釈に用いることができるため(専利法第59条第2項)、権利範囲を限定するような記載は禁物である。

(4)特許権評価報告制度(改正専利法第61条)
 出願日(優先権を伴う場合優先日)が2009年10月1日(同日含む)以降である実用新案権及び意匠権については、改正後の特許権評価報告が作成される。しかしながら、出願日(優先権を伴う場合優先日)が2009年10月1日より前の場合、実用新案権についての検索報告が作成されるに過ぎない。

 改正専利法の内容は早期に確定したものの、実務的手続き内容を詳細に規定する実施条例及び審査指南の内容は未だ確定していない。手探り状態ではあるが上述したような知識産権局の通知内容に従って手続きを行うほかない。
 なお、10月中旬~下旬に実施条例の内容が確定する見込みである。

 また最高人民法院は2009年9月27日改正後の専利法に関し以下のとおり通知を行った((2009) 49号)。

 それによると、人民法院が取り扱う特許権侵害訴訟においては、原則として2009年10月1日以前に訴えられた特許権侵害行為に対しては改正前の専利法が適用され、2009年10月1日以降に訴えられた特許権侵害行為に対しては改正後の専利法が適用される。

 損害賠償請求に関しては以下のとおり通知している。2009年10月1日以前に侵害行為が発生し、かつ、2009年10月1日以降も侵害行為が継続するとして訴えられた特許権侵害行為に対しては、改正前及び改正後双方の専利法に基づき侵害者が損害賠償責任を負わなければならない場合、改正後の専利法にて確定される損害賠償額を適用する。

 仮処分請求及び証拠保全等に関しては、訴えられる特許権侵害行為が2009年10月1日以前に発生しているが、当事者が2009年10月1日以降に人民法院に対し、仮処分及び証拠保全等を求めた場合、改正後の専利法が適用される。

 司法解釈に関しては、「特許紛争案件の審理に法律を適用する問題に関する若干の規定(法釈(2001)第21号)」及び「特許権侵害行為の提訴前停止に法律を適用する問題に関する若干の規定(法釈(2001)第20号)」が改正後の専利法と矛盾する場合は、改正後の専利法が優先され、これら司法解釈は採用されない。
以上
 

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