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中国改正専利法に対する実施細則公布される

2010年2月1日施行


執筆者 弁理士 河野英仁
2010年1月19日

 中国国務院は2010年1月18日、2009年10月1日に施行された改正専利法に対する実施細則を公布した。実施細則は専利法に対する詳細な事項を規定している。改正実施細則は、2010年2月1日に施行される。

 日本企業にとって注意すべき、主な改正点は以下のとおり。

1.保密審査
 中国国内で完成した発明については、改正専利法第20条の規定に基づき、中国で保密審査を受けた上で、外国出願しなければならない。改正実施細則により保密審査に関する具体的取り扱いが明らかになった。

専利法第20条は保密審査に関し以下のとおり規定している。
専利法第20条
第1項 いかなる機関又は組織又は個人も、中国国内で完成した発明創作又は実用新案を外国に特許出願する場合、先ず国務院特許行政部門による秘密保持審査を受けなければならない。秘密保持審査のプロセス、期限などは国務院の規定に従って執行する。

第4項 本条第1項の規定に違反して外国に特許出願した発明又は実用新案は、中国で特許出願する場合、特許権を付与しない。

 つまり、保密審査を受けることなく、外国出願を行った場合、中国で特許権は付与されない。中国国内で発明・実用新案が完成する可能性のある企業は要注意の規定である。

 実施細則第8条には具体的な手続が規定されており、以下の3パターンに分類される。

パターン1:中国から直接外国出願、または、外国の受理官庁へPCT出願する場合。この場合、先に国務院特許行政部門に保密審査の請求を行い、かつ、出願に係る技術内容を詳細に説明しなければならない。

パターン2:国務院特許行政部門に特許出願した後に、パリルートで外国出願、または、外国の受理官庁へPCT出願する場合。この場合、外国出願またはPCT出願前に、国務院特許行政部門に保密審査の請求を行わなければならない。

パターン3:国務院特許行政部門にPCT出願を行う場合。この場合、PCT出願と同時に保密審査が行われたものとみなされる。

 実務上はパターン2またはパターン3のケースが多いと思われる。保密審査請求後、国務院特許行政部門は実施細則第9条の規定に従い、保密審査を行う。出願人は以下の手順で外国出願することができる。区切りは保密審査請求後4ヶ月と6ヶ月である。

 国防上問題のある発明・実用新案については、出願人に保密審査通知が届く。請求後4ヶ月以内に、当該保密審査通知を受け取っていない場合は、問題がないとしてパリルートによる外国出願またはPCT出願が可能となる。

 保密審査通知を受け取った場合、国務院特許行政部門による審査が行われ、問題有りと判断された場合、保密決定がなされる。保密審査通知を受け取ったものの請求後6月以内に保密決定を受け取っていない場合、パリルートによる外国出願またはPCT出願が可能となる。

 保密審査に関する規定に反した場合、中国国内での特許権付与が認められなくなるため、保密審査請求及び期間管理には十分に注意する必要がある。

2.発明特許出願と実用新案登録出願との重複出願
 実施細則41条の規定により、同一出願人は、発明特許出願と実用新案登録出願との重複出願が可能となった。模造品対策には極めて有効な出願方法である。

 重複出願を行う場合、同日に発明特許出願と実用新案登録出願とを行い、かつ、それぞれに出願において同様の出願が行われたことを説明する必要がある。これを怠った場合、専利法第9条の規定により、ダブルパテントとして拒絶されるので注意が必要である。

 実用新案登録出願は無審査で登録される。その後、特許出願の審査において拒絶理由が存在しないと判断された場合、国務院特許行政部門から実用新案権を放棄するか否かの通知がなされる。出願人は実用新案権の放棄の声明を行うことで、特許権を取得する事ができる。

 実施細則第41条第5項により、実用新案権を放棄したとしても、実用新案権は実用新案公告の日から特許権付与の日まで存在すると規定されたことから、実用新案権が遡って消滅することはない。構造物のアイデアであり、かつ中国での模倣が多い場合、本重複出願制度を有効活用すべきである。

 なお、実用新案権放棄の声明を行わなければ特許は付与されない。

3.意匠の簡単な説明と、類似意匠制度
 専利法第27条が法改正され、意匠の簡単な説明の記載が義務づけられた。また専利法第59条第2項の規定により、意匠の簡単な説明が権利範囲解釈に用いられることから、記載には注意が必要である。

専利法第27条
意匠の特許出願をする場合は、願書、その意匠の図面又は写真及びその意匠についての簡単な説明等の書類を提出しなければならない。
専利法第59条第2項
意匠特許権の保護範囲は、図面又は写真に示されたその意匠特許の製品を基準とし、簡単な説明は図面又は写真に示された製品の解釈に用いることができる。

 実施細則第28条によれば、意匠の簡単な説明には、意匠に係る物品名、用途及びデザインの要点を記載するほか、デザインの要点を示す一の図を指定しなければならない。また、類似意匠登録出願を行う場合、意匠の簡単な説明欄において本意匠(基本意匠)を指定しなければならない。

 専利法第31条第2項の規定により類似意匠登録出願が認められた。つまり一出願内に本意匠に類似する類似意匠を含めることができるようになった。

専利法第31条第2項
1つの意匠の特許出願は、1つの意匠に限らなければならない。同一の物品に関する2つ以上の類似意匠、又は同一区分に属しかつ一組として販売又は使用される物品に用いる2つ以上の意匠は、1つの出願とすることができる。

 実施細則第35条によれば、類似意匠は、本意匠に類似していなければならず、1件の本意匠に対して10個まで類似意匠を含めることができると規定された。つまり、類似意匠に類似する意匠の出願は認められず、また本意匠に類似する類似意匠の数も10個までと明確に制限された。

改正実施細則は以下のURLから閲覧することができる。(中国語)
http://www.gov.cn/zwgk/2010-01/18/content_1513398.htm
以上

◆ここに示す判決要約は筆者の私見を示したものであり、情報的なものにすぎず、法律上の助言または意見を含んでいません。ここで述べられている見解は、必ずしもいずれかの法律事務所、特許事務所、代理人または依頼人の意見または意図を示すものではありません。

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