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先発明主義が消える?

2007.8.1 岡田充浩

1.はじめに
 特許制度には、同一発明が競合したとき、先に出願した者に特許を付与する“先願主義”と先に発明した者に特許を付与する“先発明主義”とがあり、“先発明主義”は米国のみで採用されています。しかし、現在、米国は先願主義への移行を審議しており、先発明主義が消えようとしています。そこで、今回は米国で採用されている先発明主義について簡単に説明します。

2.米国が先発明主義を採用している理由
 先発明主義によれば、例えば、資力の乏しい者が発明をして出願費用を工面している間に資力ある企業が後から発明をしたにも拘わらず先に出願をして特許権を取得するといった事態を回避でき、先発明した者を保護することができます。また、先発明主義は、発明日の前後により出願の優劣がつき、早期に出願をする必要がないので、基本となる発明をした後も実験を重ねて多数の実施例を蓄積し、これらをカバーする出願書類を作成することができます。米国では、発明した者を積極的に保護することが憲法で保障され、全特許出願のうち約1/3が資力の乏しい個人発明者又はベンチャー企業による出願で占められているため先発明主義による保護の要望が多くあります。そのため、米国は先発明主義を採用してきました。

3.なぜ米国は先願主義へ移行しようとしているのか?
 では米国はなぜ先発明主義から先願主義へ移行しようとしているのでしょうか? それは、先発明者と名乗る者が突然現れて特許の無効を主張したりライセンス料を要求するようなサブマリン事件が多発し、事件に巻き込まれた権利者が権利の安定性又は費用の重荷に耐えかねて先発明主義を否定するようになったからです。尚、米国には出願後に内容を公開する出願早期公開制度がありますが国内のみにした出願には適用されないので、サブマリン事件を回避するに至りませんでした。

4.先発明主義が消えようとしている
 こうした背景のもと、米国では、先願主義へ向けた特許法の改正案が議会へ提出されました。現在、改正案は、両院司法委員会で承認されて一部修正を受け、本会議に上程されました。修正された改正案は、純粋な先願主義というわけでなく、発明をして先に発表した者と先に出願した者とが競合した場合、後願であっても先発表者を優先するという“先発表主義”を規定しています。現段階ではこの先発表主義がどのように作用していくのか不明瞭ですが、少なくとも先発表主義により特許付与を望む者が発明を早期に発表するようになりサブマリン事件を回避できるようになると推測されます。

◆海外への特許出願について御相談が御座いましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡下さい

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