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技術ライセンス契約作成上の留意点

〜改良技術の支配とその限界〜

2007.9.1 新井景親

 ライセンサー(特許権者)の立場で技術ライセンス契約を締結するときには、ライセンシー(特許権者から実施許諾を受けた者)が開発した改良技術について、その改良技術の特許権をライセンサーに譲渡する義務(アサインバック)又はライセンサーに改良技術の実施を許諾する義務(グラントバック)を課し、改良技術を自己の支配下に収め、技術市場で有力な地位を形成することが行われます。
一方で前記義務が反競争的であるときには、前記義務は独占禁止法19条(不公正な取引方法)又は独占禁止法3条前段(私的独占)の規定に違反する虞があります。
 以下アサインバック条項及びグラントバック条項の留意点について説明します。

1.アサインバック条項
 アサインバック条項はライセンシーの実施を制限する虞が極めて高い条項です。従ってライセンサーとライセンシーとが競争関係に立っていないか、又はライセンシーに改良技術を実施する意思がなく、ライセンサーがまとめて管理した方が技術を効率的に利用しやすい等の事情が認められ、ライセンシーに十分な対価を支払う条項を設ける場合に、アサインバック条項を設けるようにした方が良いでしょう。
またライセンシーに実施の意思があると認められるときには、譲渡後の改良技術をライセンシーが自由に実施できる条項及びライセンシーに十分な対価を支払う条項等を設けて、アサインバック条項を設けることが考えられます。
このような条件を満たすことができないときは、アサインバック条項は設けるべきではないでしょう。

2.グラントバック条項
 グラントバック条項は互いに公平な内容であることが前提ですので、反競争性が問題になることはあまりありません。今回のようにライセンサーがライセンシーの改良技術を実施できるようにするというケースでは、ライセンサーの特許権及びライセンシーの改良技術に関する特許権を共同で所有する内容のグラントバック条項を設けることが一般的です。この内容だとライセンサー及びライセンシーは特約がない限り、互いの技術を自由に実施することができます。但し共有している権利を譲渡するとき又は第三者に実施権を許諾するときには、相手方の同意が必要になります。
従ってグラントバック条項を設けるときにはライセンシーの改良技術の実施を制限するような特約を設けないように注意しましょう。また第三者に実施権を許諾するときにライセンシーの同意を不要にするには、その旨の特約を設けることが必要です。無制限に許諾できるようにすることは難しいですが、契約発効後5年経過後の実施権の許諾にライセンシーの同意は不要である、又は生産規模の小さい企業に対して実施権を許諾するときはライセンシーの同意を必要としない等の特約を設けることが考えられます。

◆ライセンス契約について質問がある方は、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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