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ソフトウェアの著作権は誰に帰属するか?

〜委任契約等での留意点〜


2008.4.1 新井 景親

1.はじめに
 著作権法15条には、法人の業務に従事する者が職務上作成するソフトウェアの著作者は、法人である旨規定されています。これは従業員との間で通常の雇用契約を結び、従業員がソフトウェアを作成している場合は、ソフトウェアの著作権は法人に帰属するということです。委任、請負及び派遣契約(以下委任契約等)で業務に従事する者が作成したソフトウェアの著作者が法人となるか否かについては、最高裁判決(H15.4.11)において判断指針が示されております。

2.最高裁判決
 最高裁判決に先立つ高裁判決では、雇用契約書の不存在及び勤務管理の不徹底等の事実から、法人と業務従事者との間に雇用関係はなく、法人による著作物の利用は、著作権の侵害に該当すると判示しました。
 これに対し最高裁判決では、雇用契約書の存否等、形式的な事実に囚われることなく、法人のオフィスで作業を行っていたこと及び基本給名目で金銭の支払いを受けていた等の事実から、法人の指揮監督下で労務を提供し、その対価として金銭の支払いを受けており、法人と業務従事者との間には雇用関係が存在すると判示しました。  最高裁判決により、委任契約等を結んだ業務従事者が作成したソフトウェアの著作者は、実質的に雇用関係が存在すれば法人となります。

3.留意点
 法人が業務従事者との間で委任契約等を結ぶ場合には、「実質的に雇用関係が存在すること」の立証を容易にするために、雇用契約に近い内容(報酬は定期的賃金の支払とし、労務災害規定その他の福利厚生規定を盛り込んだ内容)にしましょう。

4.外注の場合の留意点
 なおソフトウェアを外注する場合は以下の点に留意して下さい。発注したソフトウェアの著作権は原則として受注者に帰属するので、発注者が著作権の帰属を望むのであれば、その旨の契約を締結して下さい。このとき、発注者がソフトウェアのバージョンアップを行うのであれば、発注者がソフトウェアをバージョンアップする権利及びバージョンアップしたソフトウェアの著作権は発注者に帰属する旨の特約を締結して下さい。特約がないと、両権利は受注者に帰属すると推定されるおそれがあります。またバージョンアップしたものも含めて、受注者は著作者人格権(著作者の名誉を守る権利、例えば著作物を公表する権利)を行使しない旨の契約も締結して下さい。

■ソフトウェアの知的財産権についてご質問がある方は河野特許事務所までご連絡ください。

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