特許成立前に、特許を受ける権利者が他者と
ライセンス(実施許諾)契約を結ぶことがあります。この場合のライセンスを保護する制度として、
仮通常実施権制度が創設され、
発明の早期の活用が図られることになりました(施行日は未定ですが、遅くとも平成21年4月までには施行されます。)
☆現状の問題点
特許成立前に、特許を受ける権利が
@譲渡されることがよくあります。また、特許を受ける権利者が
A破産する場合もあります。上述のライセンスを受けていたライセンシーは、移転理由がAの場合、新権利者から
契約解除を要求されます。@の場合でライセンシーが事業を継続しているとき、特許成立前の実施については、
補償金(他者の出願中の発明を実施した者が、特許成立後に請求される債権)を、特許成立後の実施については
差止・損害賠償を新権利者から請求されるおそれがあります。
☆仮通常実施権制度
特許を受ける権利者は、出願段階で他者に
仮通常実施権を許諾することができるようになります。これにより、ライセンシーは、出願段階から発明を実施することができます。特許が成立した場合には、現行の
通常実施権が許諾されたものとみなされます。
☆仮通常実施権に係る登録制度
仮通常実施権の許諾について、特許庁の登録原簿に
登録した場合、特許を受ける権利等をその後に取得した
第三者に対して効力を有します。すなわち、上述のAの場合に、契約解除を要求されることがなく(破産法56条)、@の場合で特許が成立したときに、新権利者から補償金を請求されることがなく、事業を継続しても、差止・損害賠償を請求されることはありません。
また、登録記載事項のうち、(i)
ライセンシーの氏名、(ii)
通常実施権の範囲については一定の
利害関係人にしか開示されないことになり、ライセンシーの保護が図られることになります。同様に、特許成立後の通常実施権も開示が制限されるようになります。
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