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発明者は誰?

〜複数の者が関与した発明の帰属〜


2009.6.1 野口 富弘

  技術が複雑になるほど共同研究が行われるケースが多くなります。発明を完成する過程において、一人の者のみが関与した場合には、誰が発明者であるかは明らかですが、複数の者が関与した場合には、真の発明者が誰であるのかが問題となるときがあります。そこで、一つの裁判例(本件)を通じて共同研究時の留意点を紹介します。
1.事案の概要
 原告Xが、Mを補助者として株式会社Dとの契約に基づく研究の過程で発明をしたところ、原告Xの後任である被告Yが、原告Xに無断で自らを発明者として第三者Gに特許を受ける権利を譲渡し、当該第三者Gに特許出願させたとして、原告Xは被告Yに対して損害賠償の請求をしました。原審は、原告Xの請求の一部を認容しました。本件は原判決を不服として被告Yが控訴した事案です(平成20年5月29日 知財高裁 平成19年(ネ)第10037号)。
2.主な争点
 原告Xが本願発明の発明者に当たるか。
3.知財高裁の判断
 知財高裁は、複数の者が共同発明者となるためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、一体的・連続的な協力関係の下に、それぞれが重要な貢献をなすことを要する、とした上で、本願発明の内容及び本願発明に至るまでの過程における原告XのMに対する指導、説明、指示等の関与の程度を総合考慮して、本願発明(ガラス他孔体の製造方法)の発明者はMと被告Yであり、原告Xは本願発明の発明者ではないと判示し、原判決を取り消し、原告Xの請求を棄却しました。
4.共同研究時の留意点
 @研究過程で得られた結果は、当業者が実施できる程度の具体性、客観性をもって報告書等に漏れなく記載しておくことが必要です。本件では、原告側の報告書には、一定の条件で他孔性現象が確認されたことが記載されていたものの、本願発明の特徴的部分の記載がなく、当業者が実施できる程度の具体性・客観性がないとして、原告Xが発明者であると認定する根拠にならないとされました。
 Aある特有の現象が確認できたとしても、その有用性を検証することが必要です。本件では、他孔性現象の有用性を確認、検証したのは被告側であるとし、原告Xは、Mに対して、管理者として一般的な助言・指導を与えたにすぎず、当業者が反復実施して技術効果を挙げることができる程度に具体的・客観的な構成を得るための行為に寄与していないとして、原告Xの関与が否定されました。  このように、研究に携わる者は、ラボノート(研究ノート)等を使用して、研究・実験過程で得られた成果を、日付や発明者のサインとともに詳細に記録しておくことが大切です。

◆発明に関するご相談は、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせください。

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