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マジコン裁判のその後


2009.12.1 八木 まゆ

  任天堂を始めとする各社が、所謂マジコンとよばれる機器を製造・販売・輸出入していた業者を訴えていた訴訟は、2009年2月27日に東京地裁により判決(東京地裁平成20年 (ワ)第20886号)が出されました。
  マジコンとは、ニンテンドーDS(※)上では本来起動しないはずの不正な複製ソフトによるプレイを可能とする『R4 Revolution for DS』に代表される機器です。

◆東京地裁の判決の趣旨
 任天堂他の主張を全面的に認め、マジコン側業者の行為を不正競争防止法2条1項10号の「不正競争行為」として認定し、マジコンの輸入・販売行為の差し止めを認める判決を下しました(損害賠償請求はなし)。
 なお裁判では、任天堂他による正規に購入されたDSカードがセットされた場合のみゲームの実行を可能とするアクセス管理技術が上述の2条1項10号の文言である「技術的制限手段」に当たるか否か、及び、マジコンが「技術的制限手段」の無効化する機能「のみ」を有するといえるかが主な争点とされました。
 判決では、平成11年に不正競争防止法をコンテンツの法的保護のために改正した際の経緯、立法趣旨に照らし、任天堂他によるニンテンドーDSのアクセス管理技術を「技術的制限手段」と認定しました。更に、2条1項10号の「のみ」の要件は、別の目的で製造されて偶然に無効化の機能を発揮する装置を除外するための規定であるから、マジコンは『「技術的制限手段」を無効化する機能「のみ」を有する装置』であると認定しました。

◆コンテンツの保護
 しかしながら、マジコン側業者による販売・輸入行為が未だ後を絶たない状況にあります。任天堂は2009年10月、そして更に11月にも、同様な訴訟を重ねて提起し、徹底的な態度をみせています。
 先の裁判で任天堂側の主張が認められたにも関わらず、マジコンの輸入・販売行為が後を絶たないのは、業者や商品名が変わるなどして免れていることが主であると推測しますが、本件で適用されている2条1項10号違反が刑事罰の対象ではないこともあると考えます。
 この点、判決では、不正競争防止法の立法趣旨を照らし合わせる際に、同時期に改正された著作権法との比較に触れています。著作権法では、「技術的保護手段」を回避する専用装置の販売行為を同様に著作権侵害の対象とし、しかも刑事罰を適用しています(第30条、第119条、第120条の2)。しかしながら著作権法でいう「技術的保護手段」は、著作権を守るための不正な複製を抑止する「コピー管理技術」に限定され、本件のように不正な実行(起動)を可能とする技術は対象としていません。したがって、本件については著作権法を適用し、マジコン側業者を刑事罰にて罰することができません。
 日本のコンテンツ事業は重要なものとなっています。コンテンツ保護(ソフトウェア関連)の分野では技術の進展が日々著しく、侵害の形態も多様化するので法整備は困難なのですが、知的財産制度全体で違法コンテンツを排除するための強化が必要かもしれません。

◆ソフトウェア関連特許の知的財産権に関するお問い合わせは、河野特許事務所までお気軽にご相談ください               なお、※は登録商標です。

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