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意匠のススメ

〜特許・商標を補完しよう〜

2010.1.4 新井 景親

  意匠法は物品の形状・模様・色彩を保護対象としており、物品に施されたデザインを保護するものです。 しかしデザインの保護は意匠法の一側面にすぎません。少し視点を変えれば、特許・商標を補完する役割が見えてきます。

1.特許を補完する役割
 例えば、ペンの持ち手部分について研究し、最も書きやすい形状を開発したとします。この形状について権利を取得する場合、特許出願を行うことが考えられます。
 しかし特許出願は、出願から登録されるまで長期間を要し(審査請求後最初の通知まで平均28.5ヶ月)、短期間で費用を回収する商品には不向きな面があります。また出願費用も低廉とはいえず、審査において進歩性なしとして拒絶される可能性も低くありません(登録率約50%)。
 一方意匠出願の場合、特許出願に比べて出願費用は低廉ですし、短期間で登録されるので(出願後最初の通知まで平均7.4ヶ月)、短期間で費用を回収する商品に向いてます。また約80%の確率で登録されるため、特許出願と併せて意匠出願を行うことで、権利取得の可能性を高めることができます。また特許に先駆けて意匠権を取得した場合には、他社への牽制及びライセンス交渉を有利に進めることができます。ただし意匠権は登録意匠に類似する範囲までしか及ばないため、特許権に比べて権利範囲が狭いという弱点はあります。なお実用新案との差異ですが、実用新案権は無審査で発生するため、無効理由を有する可能性が高く、審査を経て付与される意匠権は、実用新案権よりも権利の安定性が高いといえます。

2.商標を補完する役割
 商標法は、ブランドを保護するものであり、デザインを保護する意匠法とは関係がないようにも思えます。しかし特定のデザインを使用し続けることで、デザインそのものが識別力を獲得し、商標的な役割を果たすことがあります。
 例えば2009年に、コカコーラの瓶の立体的形状について商標登録がなされました(出願人:ザ・コカ−コーラ・カンパニー、指定商品第32類「コーラ飲料」)。特許庁は、瓶に付される「Coca−Cola」の標章に識別力があり、瓶の立体的形状には識別力がないと判断していましたが、裁判所は、長年に亘り当該形状を一貫して使用した事実などを勘案し、当該形状は識別力を獲得していると認定しました。
 またビックカメラ株式会社(以下ビックカメラ)は、2006年に包装用容器(紙袋)について意匠権を取得しました。あくまで推測ですが、ビックカメラは意匠権に基づいて独占的に当該紙袋を使用し続けて識別力を獲得し、将来的に立体商標としての商標登録を目指しているのではないでしょうか。意匠権は登録後20年間存続すること及びコカコーラの例を考えれば、20年間の使用によって識別力を獲得することは充分に可能であると思われます。

◆意匠出願の活用について質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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