営業秘密とは企業等において秘密に管理され、公知になっていない、有用な情報(具体的には、無形の技術・ノウハウ等)です。2003年、営業秘密の刑事罰による保護強化のため
不正競争防止法に営業秘密侵害罪が創設され、その後、国外犯及び退職者の侵害行為も罰則に含める改正がなされました。しかし、近年のIT技術、ネットワーク化等の進展、オープンイノベーションの促進等の環境下で営業秘密の不正取得、流出、拡散が容易となっていることから、
2010年7月1日施行の改正法により、営業秘密侵害罪の対象行為が拡大されました。以下、概要を紹介します。
(1)改正の3つのポイント
(a)改正前は、「不正競争の目的」が必要でしたが、改正後は、「
不正の利益を得る目的、又は営業秘密の保有者に損害を加える目的」と広くなり、競争関係にない者の行為も含まれます。
(b)改正前は、不正に取得した営業秘密の「開示、使用」が必要でしたが、改正後は、「
開示、使用に至る前段階の取得行為」も対象となります。
(c)
営業秘密の正当な受領者による不適切な取り扱いへの刑事罰の導入です。
(2)改正による対象行為の具体例
改正ポイントに対応して、以下の行為にも営業秘密侵害罪の適用が可能となります。
(a)不正の利益を得るため外国政府等に営業秘密を開示する行為や保有者を害するため営業秘密をインターネットの掲示板に書き込む行為(改正前は、不正競争の目的が無い場合は刑事罰の適用が困難でした)。
(b)第三者が詐欺等の不正行為により他者の営業秘密を取得する行為(改正前は、不正に取得した営業秘密を開示、使用した段階で初めて刑事罰の対象としていました)。
(c)営業秘密を保有者から示された者(従業員や取引先等)が管理義務に背いて、営業秘密が記録された記憶媒体等の横領、複製の作成、不消去、消去の仮装を行った場合の各行為(改正前は、営業秘密記憶媒体等の領得及び複製の作成行為に限定した上、営業秘密を開示、使用した段階で刑事罰の対象としていました)。
(3)今回の改正を受けての対応
今回の改正を受けて、営業秘密の保有者(管理者)、及び営業秘密の受領者は夫々の立場から以下の点に留意する必要があります。
(a)営業秘密の保有者(管理者)は、自己の営業秘密が不正に開示、使用されている場合、不正開示、使用の証拠が得られなくても第三者が不正な手段で営業秘密を取得した証拠を確認した段階で営業秘密侵害罪を訴えることができます。
(b)営業秘密の受領者は、保有者から示された営業秘密を記録した記憶媒体について不用意な複製の作成、不消去等を行うと、管理義務に違反し刑事罰の対象となる可能性があります。
■ 以上紹介しました営業秘密の保護については河野特許事務所にご相談下さい。
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