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2012.6.1 大竹 康友
他人の権利を侵害する行為を行っている認識がなくても、侵害者と同様に法的責任を問われる場合があり得ます。それではどのような点に注意を払うべきなのでしょうか。近年盛んに行われているインターネット上の販売における以下の裁判例から考えてみましょう。
1.知財高裁2012年2月14日判決(平成22年(ネ)10076号)
本事案は、控訴人(一審原告:X)が商標権を有する"Chupa Chups"と同一の標章を付した商品を、ウェブページのショッピングモールにて出店者が展示(出品)又は販売することは、商標権の侵害又は不正競争行為に該当するとして、ショッピングモールの運営者である被控訴人(一審被告 楽天:Y)に対し、Xが差止め及び損害賠償を請求したものです。一審では、出店ページに登録された商品の販売の主体は出店者であって、Yはその主体ではない等としてXの請求が棄却されました。控訴審では、Yが真正品でない商品を楽天市場で展示、販売させる行為が、Xの登録商標の識別力を害するものとして商標権侵害行為といえるか否かが主たる争点になりました。
2.知財高裁の判断
裁判所は、以下の5点を理由に、ウェブページの運営者が出店者による商標権侵害の事実を知ったときから合理的期間内に侵害内容を削除しない限り、運営者に対する差止請求及び損害賠償請求が可能と解される旨を判示しましたが、Yが「合理的期間内」に状況を是正したとして、Yによる商標権侵害行為及び不正競争行為を否定しました。
(1)ウェブページに表示される商品の多くは商標権を侵害するものではないから、ウェブページ上での販売方法が商標権侵害を引き起こす虞は少ない。
(2)仮に出品が商標権に抵触する可能性があっても、正当な権利のもとに出品されている場合があるため、直ちに侵害の可能性が高いと運営者が認識すべきものではない。
(3)出店者の商標権侵害を具体的に認識した場合は、運営者は幇助犯となる可能性がある。
(4)出店者と出店契約を締結している運営者は、運営により営業上の利益を得ている。
(5)運営者が商標法違反の指摘を受けたときは、侵害の有無を速やかに調査して契約に基づくコンテンツの削除、出店停止等の回避措置を執ることができ、これを怠ったときは、出店者と同様の責任を負うと解される。
3.今回の事案から見た留意事項
本事案では、侵害行為及びその主体が判断されるのは、商標法に規定されている直接侵害及び間接侵害の場合に限定されるものではなく、社会的・経済的な観点から侵害行為の実質的な主体を検討することが可能である、と判示している点が注目されます。以上のことから、いわゆる場所貸しの対象者との関わりが強く、そこから得られる利益が大きいほど、貸した者が貸される者と同様の法的責任を問われる可能性が高まると考えるべきでしょう。
◆ 権利侵害について質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。
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