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新興国の知財制度を把握

~日本との相違点を掴む~

2013.1.1 新井景親

インド、タイ、ブラジル等のいわゆる新興国へ進出している企業は多いのですが、新興国において日本と同様に知財のマネジメントができている企業は少数と言わざるを得ません。まずは各国の知財情報を手に入れることが必要ですが、その際、各国及び日本の制度との相違点に焦点を当てると把握し易くなります。例えばインド・タイ・インドネシア・ブラジルのライセンスに関しては以下のような相違点があります。

1. インドにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
 ライセンス契約において裁判管轄の選択が可能であり、また、準拠法の指定を制限する法規定はありません。特許ライセンスが法的に有効と認められるためには、特許庁に対する特許権のライセンス契約の登録が必須です。準拠法が日本法であれば日本における裁判判決を現地で執行することもインドの法文上可能ですが、実際には、日本の判決をそのまま執行することは出来ず、改めてインド国内の裁判所に執行のための訴えを起こす必要があります。

2.タイにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
 ライセンス契約における準拠法・裁判管轄地については、準拠法をタイ法、裁判管轄地をタイとすることが有利です。ライセンス契約については、特許・商標は知的財産局への登録が義務づけられており、ライセンス契約の登録は、申請書とライセンス契約書を知的財産局に提出することになります。契約書の記載言語に制限はありませんが、実務上はタイ語以外の言語で契約書が作成されている場合、タイ語の翻訳書及び翻訳者により正確に訳されたことを示す証明書を提出することになります。近年のライセンス契約における準拠法はタイ法が多く、理由としてタイ語への翻訳の手間がかからず、迅速な対応が可能であることが挙げられます。またタイを裁判地とした場合、弁護士費用を含むコスト面から有利であると考えられます。

3.インドネシアにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
 ライセンス契約の登録について、特許・意匠・商標・営業秘密において法務人権省知的財産総局に登録がされなければ第三者に対応できないとされています。しかし、実施規則が定まっておらず、申請は受理されますが、登録がされているわけではありません。また特許の不実施を理由として後に強制ライセンスの対象となることを防ぐために、登録申請を行った証拠を残すことが重要です。

4.ブラジルにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
 ライセンス契約における準拠法の指定を制限する法規制はありません。特許、意匠及び商標のライセンスについては特許庁に登録されなければ第三者に対して効力を発しません。ライセンス登録しない場合、契約は有効ですが、ロイヤルティを海外送金できず、税控除も受けられません

 なお特許庁のHPに「新興国等知財データバンク」が開設されています。併せて御参照下さい。

◆ 新興国の知的財産権について質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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