ソフトウェアの特許の事なら河野特許事務所 |
閉じる | ||
一覧 | トップ |
2013.12.1 新井 景親
海外で市場を確保すべく、外国で特許権、実用新案権、商標権又は意匠権を取得することは近年では珍しくありません。では特許権等を取得した後、どのような問題が起こるのでしょうか。またその問題に対し、どう対処すべきなのでしょうか。特許庁の事業の一つに「外国産業財産権侵害対策等支援事業」(以下支援事業)があります。特許庁のWEBサイト内にある支援事業のHPには、各国の侵害対策、模倣対策に対する基礎知識、相談受付及び相談事例等があり、特に相談事例には、実際に起こった模倣被害に対する対策が示してあるので実務上有益です。以下、相談事例の一つを紹介します。
1. 事案の概要
ある日本企業が自社の製品について特許権を中国で取得し、製品の製造及びその消耗部品を販売していますが、中国メーカが消耗部品を製造販売しているため、消耗部品の注文がありません。消耗部品は汎用品ではなく、当該製品の専用品であり、日本企業は、中国メーカによる消耗部品の製造販売を差し止めたいと考えています。なお日本企業は消耗部品について中国で特許権を取得していません。
2.中国における特許権の権利範囲
この事案は、いわゆる間接侵害に該当するものです。間接侵害とは、特許発明の一部の実施を侵害とみなすことを言い、上述したような専用品を製造販売することが該当します。日本では、間接侵害を特許法に規定していますが、中国では特許法に規定がありません。そのため共同侵害行為に関する規定(民法通則130条、司法解釈148条及び権利侵害責任法第9条等)を根拠にして間接侵害を判断することになります。
3.北京市高級人民法院が2001年9月29日に公布した「特許権侵害判定における若干の問題に関する意見(試行)」(北京高裁意見)
北京高裁意見は、間接侵害の要件として、行為者が実施した行為が直接他人の特許権侵害を構成しないが、他の者が他人の特許を実施することを誘導等する行為等を挙げており、専用品を間接侵害の対象としています。ただ北京高裁意見は法律ではないため、普遍的拘束力がなく、北京市の人民法院のみに対して指導的意義があります。
4.日本企業の取るべき対応は?
さて日本企業は中国メーカによる消耗部品の製造販売を差し止めたいと言っています。どのように対応すべきでしょうか。まずは北京市の人民法院にて裁判を行うことを検討すべきでしょう。他の人民法院に比べて間接侵害の要件が明確だからです。証拠が北京市以外に存在する等、北京市の人民法院以外で裁判を行う必要がある場合は、現地の専門家と相談すべきです。なお北京市の人民法院以外でも、間接侵害が認められた判決例があります(例えば、2011年 9月陝西省西安市中級人民法院判決 (2010)西民四初字第 00154号)。
結果論にはなりますが、中国に特許出願する段階で専用品も出願しておけば、問題を防げたかもしれません。外国に特許出願する場合には、予め情報を収集し、専門家に相談して権利化後に発生し得る問題を把握しておくことが重要です。
◆ 外国出願及び外国での権利行使等について質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。
Copyright(c) 2013 河野特許事務所