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並行輸入はどこまで可能?

特許権の国際的な消尽

2014.8.1 新井 景親

 現在、世界的な流通網が確立されており、日本企業が日本で製造販売している製品と同じ製品を海外で製造販売することは珍しいことではなく、当該製品を日本の企業が並行輸入することがあります。また海外に支店・工場がある場合、当該支店・工場が外国から製品を並行輸入することもあります。このような場合、当該並行輸入が各国特許権を侵害しないか注意する必要があります。以下、日本・米国・欧州の場合について、並行輸入の取り扱いを説明します。

1.日本の場合
 特許権者又は該特許権者と同視しうる者が海外で販売した製品を日本国内に並行輸入した場合、海外で購入した者(譲受人)と特許権者との間に当該製品の販売地域から日本を除く旨の合意があるか又はその後の転得者に対してはその旨を製品に明示した場合を除き、特許権者は譲受人及び転得者に対し、黙示の実施許諾を与えたとされ、特許権を行使することができません(BBS事件 最高裁 平成9年7月1日判決 平7(オ)第1988号)。即ち、日本を販売地域から除く取り決めが無ければ、並行輸入しても日本の特許権を侵害することにはなりません

2.米国の場合
 一方、米国では、最初の拡布が米国において行われている場合に、特許権が消尽するとされています(ファースト・セール・ドクトリン)。なお「消尽」とは特許権を用い尽くしたという意味です。2001年のJazz Photo v. ITC事件においては、米国の特許権者が外国で最初に販売した場合、国際的に消尽はしないと判断されました。即ち、米国の特許権者が外国で最初に発売した製品を米国に並行輸入することは、特許権侵害になります。
 また米国内で一度販売されたものを海外に輸出し、修理(購入した特許製品の実用性を維持するため,または製品の寿命を延長するための行為)して米国に輸入することについても、修理は特許製品の購入者に許されており、米国内で一度販売されている以上、米国の特許権は消尽し、特許権侵害とはなりません。

3.欧州の場合
 欧州(EU)では、EU域内での特許製品の移動に対してはEUの機能に関する条約第34条が、EU域外からEU域内についての特許製品の移動に対しては各国内法及び判例が適用されます。
 前記条約第34条によって特許権者はEU域内での並行輸入を差し止めることはできません。一方、EU域外からEU域内への特許製品の並行輸入は各国内法及び判例によって処理されることになります。

 このように、並行輸入に対する取り扱いは各国で異なるため、並行輸入に該当するおそれがある場合、その国での取り扱いを事前に確認することをお勧めします。

◆ 各国での並行輸入の取り扱いについて質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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