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取締役の職務発明

取締役と会社との取引

2014.12.1 田中 伸次

 法改正が話題となっている職務発明、現行法では予約承継制度が規定されています。
ベンチャー企業等では、技術担当取締役も職務発明をなし得ると思いますが、一般の従業員と同様な社内規定を設ければ、足りるのでしょうか。

1.職務発明の予約承継について
 職務発明とは、従業者等が職務上行った発明であり、職務発明についての特許を受ける権利又は特許権については、予め会社に承継させる契約、勤務規則等を定めることができるとされています(特許法第35条第2項)。

2.特許法上での取り扱い
 特許法第35条では、取締役(法人の役員)と従業者とは同等の扱いとなっていますので、取締役についても、予約承継の定めをすることは可能です。
 しかし、予約承継についての規定を就業規則に設けた場合、従業員には有効ですが、取締役には就業規則は適用されないことから、別途契約を締結することが必要です。その際、予約承継の契約は、取締役会の承認が必要であることに注意が必要です。

3.取締役と会社との取引について
 取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとする場合は、取締役会の承認を受ける必要があります(会社法第356条第1項、第365条第1項)。ただし、過去の判例(最判昭和38年12月6日)により、無償譲渡の場合は承認不要と考えられています。
 以上のことから、予約承継契約をしていない場合であって、取締役から有償で権利譲渡を受けるには、取締役会における承認が必要となります。
 なお、過去の地裁判決では、特許出願に関する事項について、担当取締役が出願準備中と取締役会で報告するのは、会社の慣行上、発明者より権利譲渡受けた上で、会社名義で出願準備中であること意味しており、それに対し、他の取締役より何らの異議も述べられなかった場合、取締役である発明者からの権利譲渡について承認したものと推認されるとした例があります(東京地判昭和58年12月23日)。
 以上のように、取締役と予約承継契約をしていない場合は、発明者である取締役から、特許を受ける権利の無償譲渡を受けるか、取締役会の承認を受けた上で、譲渡を受け、報奨金を支払うことが必要となります。もし、承認を受けずに権利譲渡を受けたことに起因して会社に損害を与えたときは、各取締役は任務懈怠として損害賠償責任を追うことになります(同法第423条第3項)。

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