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2015.8.5 廣田 由利
7月10日に特許法の改正法が公布され、職務発明制度も改正されました。施行期日はまだ決まっていません。以下に、現行の職務発明制度の問題点、及び改正職務発明制度の内容について説明します。
1. 現行の職務発明制度の内容は、以下の通りです。
① 使用者は、あらかじめ定めた契約・勤務規則等により、従業者がした職務発明についての特許を受ける権利を承継することができる。
② 従業者は「相当の対価」(報奨金)を受ける権利を有する。
使用者は研究開発に相当の費用を費やします。一方、従業者は、自身の労力の末に生まれた発明に対し、十分な報奨金を手に入れたいという願いがあります。また、職務発明はグループ単位で行われることが多く、1つの製品が複数の特許から成り立つことも多く、「相当の対価」の算定が困難になっていました。2004年に現行法に改正したあとも職務発明の「相当の対価」を巡る訴訟が頻発していました。
さらに、職務発明が他社と共同で行われたとき、一社は他社の発明者の同意がなければ承継できず、職務発明の帰属の手続きが煩雑であるという問題もありました。
2. 改正職務発明制度の内容は以下の通りです。
① 権利帰属の不安定性を解消するために、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めているときは、その特許を受ける権利は、発生した時から使用者等に帰属するものとする。
② 従業者等は、特許を受ける権利等を取得等させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)を受ける権利を有する。
③ 経済産業大臣は、相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための手続に関する指針を定めるものとする。
3. 解説
改正職務発明制度においても、発明者は従前通り、従業者です。発明者は「相当の利益」を受ける権利を有しますが、金銭に限定されず、「経済上の利益」も含むとされていますので、物品の付与等も考えられます。使用者は経済産業大臣が策定したガイドラインに従って従業者と調整して対価を決めますので、「相当の利益」の設定について、両者の歩み寄りが図られます。そこで、ガイドラインの内容が注目されます。適正に「相当の利益」が設定されることにより、使用者と発明者とが一体感を持ってイノベーションを行うことが可能になると思われます。そして、権利の帰属先の明確化により知財の迅速な一括管理が可能になると思われます。
◆職務発明制度についてご質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせ下さい。
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