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2015.11.2 大竹 康友
近年、営業秘密である企業情報の国内外への流出事案が相次いで顕在化しています。手口が高度化及び悪質化する営業秘密侵害行為に対する抑止力の向上を刑事及び民事両面で図るため、不正競争防止法が改正されました(施行日は平成28年1月1日と閣議決定されています)。
1.刑事上・民事上の保護範囲の拡大
(1)営業秘密の転得者処罰範囲の拡大
営業秘密を不正開示した者や、その者から不正を知って取得した者(現行法はここまで)のみならず、取得した者から不正を知って次々と転得した者による不正使用・開示も処罰の対象に追加されます。
(2)国外犯処罰の範囲拡大
日本国内において管理されていた営業秘密の不正使用・開示(現行法はここまで)のみならず、国内外で保管されている営業秘密(海外サーバ内の情報を含みます)を国内外で不正使用・開示及び不正取得する行為も処罰の対象に追加されます。
(3)未遂行為に対する処罰の創設
①取得未遂(例):不正アクセスが確認されている営業秘密を持ち出した事実が確認できなかった場合
②使用未遂(例):営業秘密に基づいて製造しようとした製品が完成しなかった場合
③開示未遂(例):電子メールで不正開示しようとした営業秘密が送信できなかった場合
なお、上記(1)~(3)の営業秘密侵害罪は、非親告罪として告訴がなくても起訴されるようになります。
(4)営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等の新たな規制
営業秘密を不正に使用して製造された営業秘密侵害品を譲渡・輸出入等する行為が禁止されます。(但し、侵害品とは知らないことに重大な過失がない者が譲り受けた侵害品についての行為は対象外です)
2.罰則の強化等による抑止力の向上
犯罪収益の任意的没収規定が導入されます。具体的には、個人及びその背後にいる法人から、営業秘密侵害行為によって得た報酬・収益を上限なく没収することができるようになります。
なお、罰金刑の金額の上限が概ね2倍に引き上げられ、更に海外での営業秘密の使用等に対する重罰が追加(海外重課)されます。
3.民事救済の実効性の向上
(1)民事訴訟における損害賠償請求等の容易化
従来、被告が技術上の営業秘密を使用したことは原告が立証しなければなりませんでしたが、原告が以下のA~Cを立証すれば、被告の物に原告の営業秘密を使用したことが推定されて、被告に立証責任が転換されます。
A.被告が営業秘密を不正に又は悪意・重過失で取得したこと
B.当該営業秘密が物の生産方式等であること
C.被告が当該営業秘密を使用したときに生じる物の生産等を行ったこと
→被告は、当該技術は公知であること、又は当該技術とは違う技術を使用しても同等の効果を達成できることを立証する必要があります。
(2)除斥期間の延長
営業秘密の不正使用に対する差止請求の期間的制限(除斥期間)が10年から20年に延長されます。
■ 不正競争防止法について質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。
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