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2016.7.1 八木 まゆ
特許庁は、企業がアジア市場にて知財侵害の係争に巻き込まれた場合に訴訟費用を賄うという国内初めての「海外知財訴訟費用保険制度」を民間の保険会社と協力して創設しました。
1.海外知財訴訟費用保険制度とは
海外における知財権利者である第三者から訴訟を提起された場合に、訴訟に係る手数料、弁護士費用等の訴訟費用を補償する制度です。
以下のような事例の場合に保険制度が適用されます。
・日本国のA社が、商標「X」に係る商品をアジアのある国に向けて輸出販売を開始。
・しかしながら輸出対象国において、B社が悪意を持って商標「X」を先に登録(冒認登録)。
・B社がA社に対し、登録商標「X」の侵害を理由に差止及び損害賠償を請求する訴訟を提起。
A社は裁判に応じて反論し、「X」の登録は冒認登録であって無効であると対抗しない限り、輸出を差し止められ、損害賠償が認められてしまいます。そこで裁判に応じ、反論によって登録商標「X」の無効が認められたとしても、A社が支払わなければならない訴訟費用(現地弁護士成功報酬等)は高額になります。
A社が事前に、今回創設された保険制度に加入しておけば、訴訟が保険適用期間に提起された場合に限り、保険会社が訴訟費用を限度額の範囲内で負担してくれます。B社からの訴訟に付随する形で商標「X」の冒認登録を取り消すための訴訟(又は審判等)を提起した場合の費用についても保険会社が負担してくれます。
なお、B社による訴訟の対象がA社の現地法人である場合も条件を満たせば適用可能です。
2.保険適用対象
・加入方法:掛金支払(掛金はアジアにおける売上高等に応じて決定)
・適用地域:外務省が定める「アジア」全域(北朝鮮、及び日本国は除きます。)
・適用対象事件:知的財産権に係る損害賠償請求、差止請求、信用回復措置請求、不当利得返還請求。これらの請求に付随してなされる審査、審判又は訴訟による権利有効性の確認の求めを含む。
・適用対象費用:訴訟手数料、弁護士着手金、報酬等
・支払限度額:1訴訟につき、500万円又は1,000万円
・適用期間:2016年7月1日午前0時から2017年6月30日午後12時(1年間)
(中途加入も可能であり、20日までに支払った場合に翌月の1日が始期)
3.加入条件
保険に加入するには、商工会議所会員、全国商工会連合会会員、または中小企業団体中央会会員であることが必要です。今回、中小企業基本法に定める「中小企業」と認められる企業は、掛金の半額を国が補助します。
4.保険適用対象外
訴訟が結果的に敗訴になり、損害賠償金額を請求されたときの"賠償金"の支払いには保険は適用されません。また、"和解金"、"解決金"等の支払いには保険は適用されません。
また、現地への交通費等の費用についても保険は適用されません。
◆ 国内外における知的財産全般については、河野特許事務所までご相談ください。
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