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職務発明規定ありますか?見直しましたか?

~ガイドライン及びひな形の公表~

2016.12.1 新井 景親


 会社が従業者から職務発明について特許を受ける権利又は特許権(以下特許権等)を取得した場合、会社は従業者に「相当の利益」を付与しますが、平成27年法改正により、職務発明規定で「相当の利益」を定めても、それは「不合理なもの」であってはならないとされ(特許法第35条第5項)、平成28年4月に、「不合理なもの」であるか否かを判断する為のガイドライン及び中小企業向け職務発明規定ひな形(※下記URL参照)が特許庁より公表されました。公表を機に職務発明規定の策定又は法改正に対応した見直しをされては如何でしょうか。以下職務発明規定策定のポイントを解説します。

1. 相当の利益を決定する基準案の作成・協議及び基準の決定
まずは相当の利益を決定する基準案を作成し、従業者と「協議」します。協議の方法には制約がなく、例えば従業者を集めて説明会を開くか又は従業者の代表者と協議することが挙げられます。書面又はメールでの協議も可能です。協議の結果、合意に至ることまでは求められていませんが、実質的に協議が尽くされることが望ましいとされています。「協議」を経て、基準を決定します。なお「相当の利益」は金銭に限定されず、会社負担による留学機会の付与又は昇給を伴う昇進等も含まれます。
2.従業者への基準の開示
基準の決定後、基準を従業者に「開示」します。従業者が見ようと思えば見られる状態にする必要があります。「開示」の方法には制約がなく、例えば従業者が見やすい掲示板への掲示、従業者が常時閲覧可能なイントラネットへの公開又はメールでの配信が挙げられます。
3.意見の聴取
職務発明について会社が特許権等を取得し、基準に基づく相当の利益を従業者に付与する際、会社は従業者から意見(質問、不服等)を「聴取」する必要があります。基準を策定したのに、なぜ従業者から意見を聴取する必要があるのかと思われるかもしれませんが、例えば、職務発明が多大な利益を会社にもたらした場合、基準で定めた利益が「相当の利益」とは認められないことがあるからです。「聴取」の方法には制約がなく、聴取後に相当の利益を付与してもよいし、基準に基づく相当の利益の付与後に聴取することも可能です。「聴取」の結果、相当の利益の内容について、従業者と合意することまでは求められていませんが、会社は従業者の意見に真摯に対応する必要があります。例えば、従業者の意見に会社が全く回答しない場合、不合理と評価されると考えられます。ガイドラインによれば、意見の聴取後、必要に応じて相当の利益の内容を決定し直すことが望ましいとされています。従業者としては、会社の対応を促すため、述べた意見を記録するのも一つの手段でしょう。
4.基準の改定
基準を改定する場合、改定部分については、新たな基準を策定するのと同じですので、会社は、改定部分についての従業者との「協議」、改定した基準の「開示」を行う必要があります。なお改定後の基準は、原則的に改定後になされた職務発明に対して適用されます。

※ガイドライン: http://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/shokumu_guideline.htm
※中小企業向け職務発明規定ひな形:
           http://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/shokumu_cyusyou.htm

◆ 職務発明規定について相談・質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご連絡ください。

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