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2017.1.4 森田 恭允
審査基準の改訂により、所定の制限下、食品の用途発明が認められることとなりました(特許庁HPにて2016年3月23日付で掲載)。以下、審査基準における具体例を示して説明致します。
1.従前の規定
従来、「○○用××(例えば、紙容器用積層材料)」といった用途発明が認められておりましたが、食品は認められていませんでした。例えば、発明が「成分Aを添加した骨強化用ヨーグルト」である場合、「骨強化用」という部分は考慮されず、「成分Aを添加したヨーグルト」として審査されていました。よって、「成分Aを添加したヨーグルト」が公知の場合、「骨強化用」の部分に新規性及び進歩性があるとしても、特許権は取得できませんでした。
2.本改訂の内容
本改訂により、食品に関して、審査において「○○用」の部分が発明特定事項として認定され、用途発明として認められることとなりました。以下、審査基準に新たに示された例を挙げます。
【請求項1】成分Aを有効成分とする二日酔い防止用食品組成物。
【請求項2】前記食品組成物が発酵乳製品である、請求項1に記載の二日酔い防止用食品組成物。
【請求項3】前記発酵乳製品がヨーグルトである、請求項2に記載の二日酔い防止用食品組成物。
以下の(1)及び(2)の両方を満たすときには、「二日酔い防止用」という用途限定も含めて、請求項に係る発明を認定します。
(1) 「二日酔い防止用」という用途が、成分Aがアルコールの代謝を促進するという未知の属性を発見したことにより見いだされたものであるとき。
(2) その属性により見いだされた用途が、「成分Aを含有する食品組成物」について従来知られている用途とは異なる新たなものであるとき。
これにより、「成分Aを含有する食品組成物」が公知であったとしても、「二日酔い防止用」ということにいわゆる進歩性があれば(新規性は上記(1)(2)で実質的に担保される)、特許権を取得することができることとなります。食品組成物の下位概念である発酵乳製品やヨーグルト等も同様であり、「○○用発酵乳製品」、「○○用ヨーグルト」等も「○○用」という部分に進歩性があれば、特許となり得ます。
3.注意点
発明が植物、動物そのものである場合(「○○用バナナ」「○○用サバ」「○○用牛肉」等)、「○○用」の部分は、発明特定事項として認定されません(審査ハンドブック参照)。ここで、「牛肉」が例示されていることから、原材料に切断等の処理を行っていても、生鮮食品は、植物、動物そのものと判断される虞があると考えられます。
4.注意点への対処法
対処法としては、発明を加工食品とすることが考えられます。審査ハンドブックにおいては、「○○用バナナジュース」「○○用魚肉ソーセージ」等は、植物、動物そのものでないものとなっています。
また、特許請求の範囲において、植物、動物そのものを包含しない記載とすることが考えられます。具体的には、審査ハンドブックにおいて、「○○用食品組成物」等は、通常、動物又は植物を包含するものでないと判断し得るとされているので、このように記載することが考えられます。また、「○○用食品」等と特許請求の範囲に記載しておいて、明細書で動物又は植物そのものを包含しないように定義する、又は後で補正する等の対処が考えられます。
◆ 食品の用途発明についてご質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせ下さい。
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