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2017.6.1 新井 景親
2016年4月1日に意匠審査基準が改正され、画像の意匠登録対象が拡大されました。改正前は、予め物品に記録された画像、例えば、デジタルカメラ又はスマートフォンの操作・設定用の画像が対象でしたが、改正によって、事後的にダウンロードされたアプリケーションプログラム(以下、アプリ)によって表示される画像も登録の対象となりました。改正後1年が経過し、アプリの画像に係る登録意匠が蓄積されてきました。以下、アプリの画像に係る登録事例を紹介し、併せて、アプリを製造販売する場合の留意点について説明します。
1.登録事例
(1)物品名:「検針機能付き 電子計算機」 |
(2)物品名:「ビデオ会議機能付き 電子計算機」 |
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意匠登録第1575043号 |
意匠登録第1571013号 |
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【正面図】 |
【使用状態を示す 参考図】 |
【正面図】 |
【使用状態を示した 参考正面図】 |
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(1)は電気・ガス・水道等の検針用の画像をスマートフォンに表示させるもの、(2)はビデオ会議における相手方の映像と発言をスマートフォンに表示させるものです。いずれも具体的な数値・文字は記載せず、絵は破線表記にし、意匠の構成要素から除外して、用途・機能を実現するための汎用的なテンプレートのような態様にし、意匠権の範囲を拡張しています。
2.アプリを製造販売する場合の留意点
自社開発したアプリが、「電子計算機」に係る登録意匠の画像と同一又は類似する画像を生成する場合、そのアプリの製造販売は「電子計算機」を製造販売するものではありませんが、そのアプリが、登録意匠に係る特定の用途・機能を実現する「電子計算機」の製造にのみ用いる物(アプリは物とみなされ、アプリのインストールは電子計算機の製造とみなされます)である場合、つまり前記特定の用途・機能を実現させる目的以外の目的で使用されることがない場合、意匠権を侵害するものとみなされます。上述の物品名(「〇〇機能付き電子計算機」)からもわかるように、アプリの画像は、特定の用途・機能と強く結びつくことが多いため、特定の用途・機能を実現させる目的以外の目的で使用される状況は考え難く、登録意匠の画像と同一又は類似している場合、意匠権を侵害するとみなされる可能性は高いと考えられます。そのため、アプリを製造販売する場合、必ず事前に意匠調査を行いましょう。
なお自社アプリの画像が他社の登録意匠に非類似であると判断できる場合、自社アプリの画像を保護すべく、意匠出願することも考えられます。ただし、他社の登録意匠に非類似であっても、使い易さに定評のある従来の画像を踏襲した画像は、従来の画像に基づいて、容易に創作できるとして、拒絶される可能性がある点に留意ください。
◆画像意匠について相談・質問がございましたらお気軽に河野特許事務所までご連絡ください。
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