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2018.6.1 八木 まゆ
不正競争防止法(以下不競法)、特許法、弁理士法等の改正案が2018年5月、国会で可決されました。不競法では「不正競争」(第二条第一項)の規定に「限定提供データ不正取得行為」が加えられます。
・改正前
改正前の不競法では情報漏えいに関し、「営業秘密」を「窃取、詐欺、強迫その他の不正な手段」により取得する行為を「不正取得行為」(第二条第一項四号等)とし、この「不正取得行為」に対して差し止め請求及び損害賠償請求をすることが可能です。この場合、「営業秘密」は、「秘密として管理」されていて「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」であり、「公然と知られていないもの」であるという条件が必要です。つまりこれまで、「価値のあるデータ」は、データを取得できる事業者が「秘密として管理」し、事業内で活用するものでした。
これに対し数年前に以下のような解析データを流用する事案が発生しました。
A社が運営する交通機関における旅客の流れを、センサを用いて一定の期間取得し続けて蓄積したデータを、B社における不審者検知のセンサ技術開発のために提供しました。
B社は、センサ技術開発目的以外の利用を不可とする契約事項に反し、子会社にて他の研究開発に利用し、研究開発の成果に対して他者から開発費用(利益)を得ていました。
この事案では結局、データの返還及び謝罪等で済んだようですが、仮に、A社で取得蓄積してB社に提供されたデータを、B社の子会社が「不正な手段」で意図的に他に流用し利益を得ていた場合であっても、契約違反とはいえA社にとって実害が無ければ民法上の損害賠償請求も困難です。しかも、改正前の不競法では、A社はこのデータの不正な流用を差し止め又は損害賠償請求をすることができません。なぜならば、不競法上の「営業秘密」は、データ提供者であるA社側で「秘密として管理」していることが求められるところ、A社及びB社の二者間で秘密保持契約が結ばれたとしてもB社及び子会社に、その契約内で知られるものなので「秘密として管理」されていることには該当せず、B社及び子会社が流用するデータは、不競法上の「営業秘密」に該当しないからです。
・「限定提供データ」
IoTビジネスが進むにつれて、各所に設置されたセンサ等から収集されたデータはビッグデータとして利活用されています。上述の事案以外でも例えば、C社の車両の走行データを収集してD社が自動運転制御の研究開発を行なうなどのケースが想定されます。
今回の改正では、上述したような「営業秘密」に該当しない「価値あるデータ」を対象に、不正な流用や外部の攻撃者からの取得行為(不正取得行為)、使用行為、又は開示行為に対して差し止め請求をすることが可能になります(施行は公布日-2018.5.30-から6ヶ月以内)。
対象となるデータは、「限定提供データ」として認められるデータです(改正不競法第二条第一項十一号)。「限定提供データ」として認められるには、センサ等から自動的にサーバ等に相当量、即ち解析対象として適切な程度に大量に収集されたデータであって、特定の相手に対し契約などで使用範囲を限定して事業として提供され、且つ、提供時に暗号化、パスワード、専用回線を用いるなどの対策がされているデータであること等が要件になると考えられます。
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