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2019.3.1 水沼 明子
特許法では、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものでなければならないと規定されています(特許法第36条第6項第1号)。この規定は、「サポート要件」と呼ばれています。サポート要件を満たさない請求項には無効理由があるため、特許権の行使は認められません。
1.事件の概要
事件番号:東京地裁 平成28年(ワ)第25956号
事件名:特許権侵害損害賠償請求事件
対象特許権:特許第4370851号(以下、本件と言う)
2.特許請求の範囲の記載
本件登録時の請求項1は、下記の通りです。太字で示す(1)式のサポート要件が争われました。
【請求項1】 |
3.実施例の記載
本件明細書には、下表に示す具体例が記載されています。ただし、実施例1は(1)式を満たしません。したがって、実質的な実施例は、実施例2から実施例4までの3通りです。 下表の右から4列目が、(1)式の右辺に対応しています。
表より、明細書に記載されているHc×(1+0.5×SFD)は、230.1から247.5の範囲です。
4.サポート要件について
請求項では、Hc×(1+0.5×SFD)の上限値は定められておらず、下限値230以上の全ての範囲が(1)式を満たします。しかし、明細書の実施例で裏付けられている範囲は、230.1から247.5までです。したがって、本件はサポート要件を満たさず、無効理由があると判断されました。そのため、特許権の行使は認められませんでした。
特許権者は、Hc(上表の左から2列目)の範囲を210以上221以下に限定する訂正請求を行ないました。しかし、訂正してもサポート要件は満たされないと判断されました。
数式限定クレームでは、請求項の範囲全体が実施例に開示されるように留意する必要があります。
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