ソフトウェアの特許の事なら河野特許事務所

閉じる
一覧  |   トップ  


AI関連特許取得のために

~特許として認められる3つのポイント~

2019.5.7 八木 まゆ

 本ニュースの2018年2月号で、AI関連技術について特許を取得できることについて事例を紹介しました。その後も特許庁は、Webで公開している特許・実用新案審査ハンドブック(以下、ハンドブック)におけるAI関連技術の審査事例を徐々に追加しています。また審査において引例としてAI関連技術が挙げられることも多くなっています。したがってAI関連だからと簡単に特許が認められるわけではないことも見えてきています。 特許として認められるにはどのようなことが必要なのでしょうか。  
 ハンドブックに開示されている事例や、その他の特許公報を検討しますと、
 1.入力するデータと出力するデータとの間の相関関係が、その分野での技術常識でないこと
 2.学習の方法が独自の方法であること
 3.適用分野が限定されていることが必要であると考えられます。以下各々について説明します。

1.入力するデータと出力するデータとの間の相関関係が、その分野での技術常識でないこと
 図は2019年1月にハンドブックに加えられた審査事例(事例36)で挙げられている発明の概要を表します。

図

 この事例の発明は、被検者との会話を音声認識して得られるテキストをニューラルネットワークに入力した場合に、認知症レベルを出力できるように学習したAI関連発明です。事例において、引例は、会話のテキストを単純にニューラルネットワークへ入力しているのに対し、発明は、回答者(被検者)に限った会話のテキストを、質問者による質問の種別と関連付けてニューラルネットワークへ入力するという相違を有し、その相違は出願時の技術常識でないために進歩性ありと判断される、と説明されています。事例では、発明及び引例のいずれも、音声認識で得られたテキストを入力し、認知症レベルを出力するニューラルネットワークを用いる点で共通しているのですが、事例の発明のように、入力されるデータに前処理がされ、その前処理が技術常識でなければ、進歩性が認められる可能性があることが示されています。

2.学習の方法が独自の方法であること
 画像からの物体検出といった画像認識技術は、AI関連の先行技術文献が多い分野ですが、学習効率を高めるために、データを選別し、選別されたデータに傾斜をつけて学習する方法や、異なるネットワークを組み合わせ、抽出された特徴量を他のネットワークへ入力して学習する等、独自の学習方法を特徴としている場合には、特許性があると認められる事例が少なくありません。

3.適用分野が限定されていること
 また、入力データと出力データとの相関関係や学習方法が、AIを適用する技術分野独自の問題点と密接であればあるほど、特許として認められる可能性が上がると考えられます。

◆AI関連技術の特許取得に関する御質問がございましたら、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせください。

閉じる

Copyright(c) 河野特許事務所