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2020.2.3 弁理士 新井 景親
被疑侵害品が登録意匠に類似する場合に、意匠権侵害が認められます。しかし、類似の範囲は必ずしも明確ではなく、酷似しない限り、意匠権侵害は認められないと思われがちです。平30(ワ)2439号事件(大阪地裁、令和元年11月14日判決)では、重要な形状の差異点を認めつつも、被告製品は登録意匠に類似すると判断されました。
登録意匠及び被告製品に係る意匠
登録意匠は、焼売を収納する焼売用包装容器であり、下記平面図に示す収納部を複数備えます。登録意匠は、X字状の突条、凸部及びポケットなどを備え、被告製品は、四つの独立した突条を備える点が登録意匠と異なります。
【登録意匠の収納部を示す平面図】 | 【被告製品の収納部を示す平面図】 |
訴訟に至る経緯
原告は、焼売を製造販売する訴外Aに焼売用包装容器を納入していたところ、訴外Aは被告Bに、原告製品と同様な製品の納入を依頼し、また突条には権利があるので、全く同じものにはしないようにと指示しました。被告Bは被告Cにその旨伝え、被告Cは原告特許を発見し、Xの真ん中をなくせば大丈夫であるとして被告製品を製造し、被告Bを介して訴外Aに納入しました。被告Cは意匠権の存在を把握しておらず、原告は被告B及びCを提訴しました。
裁判所の判断
裁判所は、突条について、「・・突条の形状に関する差異は,・・収容部の中央に位置し,その形状から焼売等を直接支える機能をイメージさせることから,需要者が・・食品包装用容器を観察する際,最も注目を引く差異である・・2本のX字状の突条と,4本の非交差で中央に空間のある突条では,美感が異なると言わざるを得ない。しかし,・・全体として,被告意匠の突条は,X字状の中央部分を欠くもの,X字が変化した形状という印象を与える・・上記突条の形状の差異は,意匠を全体的として観察した際に,美感に決定的な影響を与える差異であるということはできない」と判断し、被告製品に係る意匠は、登録意匠に類似すると判断しました。
考察
私見ですが、もし被告意匠が登録意匠の後願であったならば、特許庁の審査において、突条の差異点が重視され、両者は非類似であると判断され、被告意匠は登録されていた可能性が高いと考えます。上記訴訟では、上述の経緯から、被告製品の突条は、登録意匠に依拠したもの、即ち「X字が変化した形状」であると裁判所が認定した可能性があります。審査では経緯は考慮されませんが、裁判では事情を総合的に勘案した結果、酷似しなくとも、意匠権侵害が認められることがあります。
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