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特許庁が特許権を取得

~特許文献の管理システムに関する特許~

2020.6.1 弁理士 水沼 明子

 官公庁等の国の機関の職員が業務上行なった発明(職務発明)については、所属機関の長の名義で特許出願が行なわれます。「経済産業大臣」や「総務大臣」名義の特許は既に複数存在しています。2020年4月に、初めて特許庁長官名義の特許権(特許6691280号)が登録されました。

1.発明の概要
 発明の概要は以下のとおりです。 発明の概要
 本発明によると、(1)~(3)の処理と、(4)の処理とを並行して行なうことにより、世界各国の特許庁から取得した特許文献を検索用データベースに速やかに登録して管理するシステムを実現できます。
 本発明は、2018年12月から特許庁内で外国文献の検索等に利用されている「アドパス(商標登録出願中)」というシステムの追加機能に関する発明であると考えられます。

2.特許権を所有する意義
一般的には、発明を特許出願して権利化することには以下のような意義があります。
1. 発明の実施を独占したビジネス、または、実施権許諾により、収益を得る。
2. 権利を保有することで、発明を安定して自己実施する。
3. 公報が先行技術文献になるため、国内外における第三者による権利化を防げる。

3.本特許権を取得したことの効果
 本件は、特許庁の内部で審査業務に使用するシステムに関する発明です。特許庁内部の仕様書やマニュアル等は、公知文献ではありません。そのため、仮に同様の発明を行なった第三者が特許出願した場合には、公知の引用文献が発見されずに、権利化される可能性がありました。
 第三者の特許権が成立した場合であっても、特許庁は先使用権に基づいて「アドパス」の日本国内での使用を継続できると考えられます。しかしながら、「アドパス」に機能追加を行なった場合には、先使用権の範囲から外れ、第三者の特許権を侵害してしまう可能性があります。
 特許庁自身が権利化したことで、今後も「アドパス」の機能追加を安全に継続できます。さらに、他国の特許庁への技術供与および国際協力を円滑に進めることにも寄与します。

◆特許出願について質問・相談がございましたら、お気軽に河野特許事務所まで御連絡ください。

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