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2021.1.4 弁理士 八木 まゆ
カプコンがコーエーテクモゲームス(以下、コーエー)のゲームに対して特許侵害訴訟を提起していた件について、2020年12月15日、コーエーによる最高裁への上告が棄却され、カプコンの特許権を侵害したという二審判決が確定しました。
・発明の概要
訴訟で対象となったカプコンの特許権は2つあり、その内の1つは、あるゲームを記憶した第1の記憶媒体と、そのゲームの外伝となるゲームを記憶した第2の記憶媒体とがあって、外伝のゲームの第2の記憶媒体を読み込ませるときに、第1の記憶媒体を読み込み済みの場合、第2の記憶媒体に記憶されている拡張データでゲームシステムを作動させる、という方法の特許発明(3350773号特許)です。
・方法特許の間接侵害
裁判で争われた複数の争点の内、コーエーが提供する外伝のゲームを記憶した記憶媒体(第2の記憶媒体に相当)が、カプコンの特許発明に対して間接侵害(※1)に該当するかが争われ、第二審の知財高裁は、間接侵害は成立する、と判断しました。
カプコンの特許発明は、第1の記憶媒体を読み込み済みである場合は拡張データでゲームシステムを作動させる、という「方法特許」ですから、コーエーが提供する記憶媒体そのもの自体は、特許発明を直接的に侵害しませんが、「その方法の使用にのみ用いる物」という定義に当てはまるかどうかが争われました。
コーエーは、コーエーが提供する記憶媒体には、拡張データが使用できなくても単独で十分楽しめる内容のゲームプログラムが備わっていて、カプコンの特許発明の「方法の使用"にのみ"用いるもの」ではない、と主張しました。
知財高裁は、コーエーが提供する記憶媒体は、ゲーム装置に装填されて使用される用途以外の用途はないので「にのみ」に該当するとし、間接侵害を認定しました。
ただし、この間接侵害が認められたのは、コーエーが提供する記憶媒体が、「その方法の使用にのみ用いる物」にそのまま当てはまる、つまり、その物自体を利用して方法を実施する、と判断されたからであって、ゲームソフトを記憶した記憶媒体からデータを読み込んで実施する方法特許ならいつでも、間接侵害が認められるというわけではありません。
・ソフトウェア特許のクレームドラフティング
15年前に「一太郎事件」で間接侵害が議論されました。「一太郎事件」では、間接侵害は、「方法の使用にのみ用いる物」を特許権侵害とするものであって、「方法の使用にのみ用いる物」を生産する「物」(インストールによって生産する)は対象にならない、と判断されました。
もしもカプコンの特許発明が、「記憶媒体からデータを入力する装置を備えるゲームシステムが、前記記憶媒体から読み込まれたデータに基づき拡張アイコンを表示させ、表示されたアイコンが選択された場合に拡張処理を実行する方法」のような形式であった場合、「方法の使用にのみ用いる物」は、「ゲームシステム(ゲーム機)」であり、「記憶媒体」は、「方法の使用にのみ用いる物を生産する物」であると判断され、記憶媒体の販売は間接侵害と判断される対象ではない、と判断された可能性があります。
このように、ソフトウェアに関する特許発明でも記載が適切かを吟味するドラフティングが重要です。
(※1 特許法第101条第4号:特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為)
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