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ビジネス関連発明の特許適格性を否定する米国判決

~コンピュータ自体の

パフォーマンス向上の欠如を指摘~

2021.3.3 弁理士 難波 裕

米国では2014年のAlice判決*1以後、特許適格性(米国特許法101条)の判断が厳格になり、特許が無効となる事例が多く出ています。本号では、ビジネス関連発明の特許適格性を否定した新たな米国判例を紹介します。

1.事件の経緯(cxLoyalty, Inc. v. Maritz Holdings Inc.)
  cxLoyalty社は、Maritz社の特許(米国特許番号7134087)は特許適格性が無いとして、CBMレビュー*2により特許の無効を主張しました。対象特許は、参加者(ユーザ)が保有するポイントを任意のベンダー(企業)との取引に利用可能とすべく、参加者が専用のGUIを介してベンダーに取引を申し込むと、API(Application Programmable Interface)がベンダーシステムとの間で情報を送受信し、取引を成立させるポイント共通化システムです。
  PTAB(特許審判部)は、対象特許の原クレームは抽象的で、ありきたりなものであるため、特許適格性が無いと判断しました。これに対してMaritz社は、『GUIは、APIを介してベンダーシステムから受信した情報を、ベンダーシステムのフォーマットからGUI用のフォーマットに変換し、参加者に提示する』などの限定を加えた代替クレームを提出し、特許維持の審決を得ました。

2.CAFC(連邦巡回控訴裁判所)判決
  cxLoyalty社は特許維持の審決を不服として、Maritz社は原クレームの無効を不服として、互いにCAFCに上訴しました。CAFCは、原クレームだけでなく代替クレームも特許適格性を有しないとの判決を下しました。
  CAFCは、特許適格性の要件を満たすには、発明の主題が新規かつ非自明なものであるというだけでは足りず、技術的課題を解決するための新たな手段、本件ではコンピュータ自体のパフォーマンスを向上させる新たな手法が必要であると述べました。そして、「代替クレームは、コンピュータがフォーマット変換を行うための新たな手法を用いて、ツールとしてのコンピュータの使用を改善するものではない。また、代替クレームは、この機能を達成するための如何なる手順(guidance)も提示していない。従って、代替クレームは特許適格性のある技術的解決策をクレームしていない」と指摘しました。
  つまり、「フォーマット変換」はコンピュータ自体のパフォーマンスを向上させる手法ではなく、しかも具体的な変換手順が記載されていないため、特許適格性を有しないと判示しました。

3.まとめ
  所謂ビジネスモデル発明について米国に特許出願を行う場合、発明が技術的課題を解決するものと言えるかどうか、十分な検討が必要です。

◆ 特許権に関するご相談は、お気軽に河野特許事務所まで御連絡下さい。

*1 Alice Corp. v. CLS Bank International.
*2 ビジネス方法(Covered Business Method)の特許の有効性を争う暫定レビュー制度

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