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2021.4.1 弁理士 野口 富弘
データベースを含むシステムはAI、IoTをはじめとして様々な技術分野において用いられています。そこで、データベースを含むシステムが特許法の保護対象かについて争われた事案を紹介します。原告Xは「知識ベースシステム」に関する発明について、特許法の保護対象に該当しないとして拒絶査定を受けました。原告Xは拒絶査定不服審判を請求しましたが、特許庁は審判の請求は成り立たないとの審決をしました。原告Xは当該審決に対して審決取消訴訟を提起しました(平成26年(行ケ)第10014号)。
1.発明の概要
コンピュータによる論理演算の対象となる知識ベースを記憶している記憶部を備え、知識ベースは言語と関連しない記号で「物」を識別する「物識別子」と「物識別子」と対応付けられた「属性」とを含み、「属性」を言語以外のデータである「特徴データ」と言語に対応した「識別データ」とに分けて対応付けた、知識ベースシステムに関する発明です(特願2011-263928号)。
2.特許法の保護対象
コンピュータプログラムは特許法の保護対象です。また、データベースは、コンピュータの処理を規定するものという点でプログラムに類似する性質を有していればデータ構造の発明として特許法の保護対象になります(特許の審査基準)。
3.知財高裁の判断
知財高裁は、本件発明の技術的手段が「物」に関するデータを「属性」を用いて言語以外のデータと言語に関するデータとに分けて整理して関連付けた、概念を整理したもの、データの構造を定義したものに過ぎず、単に一般的なコンピュータの機能を利用するという内容に止まっているから、特許法の保護対象に該当するとは認められず、審決の認定判断に誤りはないと判断して、原告Xの請求を棄却しました。
4.保護対象とするための捉え方
知財高裁は、抽象的なデータの構造と一般的なコンピュータ等の機能を利用することだけでは、抽象的な概念ないし人為的な取決めの域を出ないものであって、特許法の保護対象に該当しないと判断しています。
(1)データベースを含むシステムをコンピュータの機能という観点から捉えると、「システム」が、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した手段や手順によって、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が実現されていれば、特許法の保護対象に該当することになります。
(2)データベースを含むシステムをデータベースという観点から捉えると、データベースがコンピュータによる情報処理を可能とする構造であれば、データベースはシステムにおける情報処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有しますので、データ構造の発明として特許法の保護対象に該当することになります。
◆ 発明に関するご相談は、お気軽に河野特許事務所までお問い合わせください。
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