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2021.10.1 弁理士 水沼 明子
2020年4月の本ニュースにて、欧州特許庁がAIを発明者とする特許出願を却下した旨をお知らせしました。この出願のファミリーに関して、オーストラリア連邦裁判所、米国カリフォルニア地裁、南アフリカ共和国特許庁、および英国裁判所の判断がでましたので、紹介します。
各国への出願状況
基礎出願は、「DABUS」と名付けられたAIを発明者とする、2件の欧州特許出願です。既報の通り、欧州特許庁は出願を却下しました。その後出願人が審判請求しました。審決はまだ出ていません。
パリ優先権を主張して、1件のPCT出願が行われました。出願番号は、PCT/IB2019/057809です。現時点で、オーストラリア、英国、南アフリカ、サウジアラビア、ブラジル、カナダおよび日本で国内移行手続済です。日本移行は特願2020-543051で、公報は未発行です。
オーストラリア
オーストラリア特許庁は、AIは発明者とはなり得ないと判断しました。そのため、発明者が記載されていない本件には方式的な不備があるとして、出願を却下しました。出願人は、オーストラリア連邦裁判所に提訴しました。裁判所は、出願却下を無効とし、特許庁に差し戻しました。判決文のなかで裁判官は、"in my view an artificial intelligence system can be an inventor for the purposes of the Act.(私の判断では、AIは特許法上の発明者になり得る)" と明言しています。裁判官は、発明者を自然人に限定するような法律上の定めはないこと、および、発明者を自然人に限定すると本件のような発明に対する特許付与の可能性が排除されてしまい不適切であることを判断の理由に挙げています。
この判決に対して、オーストラリア特許庁は上訴しました。
米国
公報が発行されておらず詳細は不明ですが、米国出願はPCT出願を経由していません。PCT出願と同様に発明者は「DABUS」です。米国特許庁は、米国特許法の複数の条文で発明者は自然人に限定されることが示唆(suggest)されており、AIが特許出願上の発明者となることは許されないと判断しました。カリフォルニア地方裁判所はこの判断を支持しました。
南アフリカ共和国
南アフリカ共和国は無審査主義国であり、方式審査で不備がない特許は登録されます。発明者が「DABUS THE INVENTION WAS AUTONOMOUSLY GENERATED BY AN ARTIFICIAL INTELLIGENCE」である特許が、ZA202103232(B)で登録済です。「DABUS」は発明者であると認められました。
英国
英国知的財産庁は、AIは発明者になり得ないと判断して、出願を却下しました。出願人は英国高等法院に提訴しました。英国高等法院と、その上級審である英国控訴院(The Court of Appeal)とは、いずれもAIは発明者になり得ないと判断しました。
まとめ
特許に関する判断は、各国で個別に行なわれます。今後も、新たな判断が出される可能性があります。
◆特許出願に関する御相談は、お気軽に河野特許事務所までお問い合せ下さい。
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